日本のトイレでは「男性用は青、女性用は赤」が当たり前だが…
青と赤に色分けされた案が市民投票で1位であったことは間違いないのだが、一方で、変更後の全体を茶系統で統一する案は2位で、票数も200票を獲得しており、1位と2位の差はわずかに8票と僅差であった。どちらも十分に支持を得ているデザインであることから、1位の意見を取りやめ、2位の意見を採用したことは、決して市民の意見をまるっきり無視したものとは言えないだろう。
そして、Twitterで怒っていた人の多くが勘違いしていると思うのだが、このデザインについての市民投票は、あくまでも「壁の色」に関する投票であって、トイレの入り口に使われる男女のピクトグラムの形や色といった部分の投票ではなかった。
Twitterなどで一騒ぎあった後、NHKがこの問題を取り上げている。明石市の担当者は、決まったのは外壁のデザインだけであり、入り口部分には青赤で色分けしたマークをつけるなど、誤解がないような工夫を検討している、などと話していた。
僕は、今回の件で騒いでいる人たちは、基本的に「ポリコレ」や「性的少数者への配慮」を嫌う人たちなのだと考えている。
その嫌うための理由として今回の件をわざわざ持ち出し「色分けしないと緊急時に間違える」「間違えたら逮捕される」「弱視などの人を軽視している」「大多数に使いづらい」などと騒いでいる。
では、彼らの言い分を聞くとして、男性は青、女性は赤と区分すれば、大多数にとって使いやすいトイレになるのだろうか。
日本のトイレでは「男性用は青、女性用は赤」というデザインが基調になっていて、僕を含めた大多数の人は、それが当たり前だと思っている。
性的少数者への配慮以前の問題
しかし世界を見ればこうした色分けは決して一般的ではなく、男女ともに同じ色であることが多いという。では何で区別するかと言えば、ピクトグラムの形やMENやWOMENといった言葉で区別している。
バリアフリーを意識する海外の公共施設では、男女とも同じ青色の背景に、男性は三角、女性は丸形の白いピクトグラムが使われていることが多いようだ。色覚に異常を持つ人にとって、青は見やすく、赤は見づらい色であることが多い。このため青地に白という色づかいが選ばれている。
今回の投票で1位になったデザイン案は、男性が淡い青色、女性が淡い赤色だったため、色覚に異常を持つ人からは似た色に見えてしまうのだという。
つまり、1位となった淡い青色と淡い赤色の組み合わせは、バリアフリーという観点からは望ましくないデザインだったと言えるのである。