2040年の東京は「4人に1人が高齢者」
もちろん、2040年になっても東京が「巨大マーケット」であることには変わりはないのだが、その姿は現在とは明らかに異なる。2040年の東京は年老いてしまうのだ。
地方から上京してきた「かつての若者」たちが老後も故郷に戻ることなく住み続けるため、高齢者の激増が避けられない。都統計部の推計によれば、東京都の65歳以上人口は2040年には現在より65万5000人ほど増えて379万4000人ほどとなる。高齢化率は27.8%で4人に1人以上が高齢者となる計算だ。このうち75歳以上が約183万3000人である。都民の7.5人に1人は75歳以上だ。
多くの人々は高齢になるにつれて若い頃のようには消費をしなくなる。こうしたことを勘案すれば、「巨大マーケット」は実人口が減りゆく以上に早く縮むこととなる。
それどころか、今後の東京は労働生産性を低下させかねない。一般的に75歳以上になると大病を患いがちになるとされるが、東京は若者を中心とした街づくりを続けてきたため、高齢者向けの施設やスタッフが不足している。このままならば、各職場で親の介護のために離職や休業をする人が増えることが懸念される。
病弱とならなくとも年を重ねた人にとっては、階段や段差の多い東京は暮らしやすくはない。移動に時間がかかる人が増えると電車やバスのダイヤが乱れ、都市機能までもが低下しかねない。
他方、中心的な消費世代である生産年齢人口(15~64歳)は、2040年には現在より60万人ほど少ない約850万人となる。60万人といえば、現在の埼玉県川口市の人口に匹敵する規模だ。これほどの規模のマーケットを短期間で失ったならば、存続できなくなる企業が出てくるに違いない。
高付加価値化と労働生産性の向上が生き残りのカギ
このように、東京の「巨大マーケット」は長くは続かない。ここに拡大型のビジネスモデルを無理やりはめ込もうとすることに無理があるのだ。それを無視して東京という幻想を追い求め続けたならば、人口減少や少子高齢化を前提としたビジネスモデルに転換するための時間を失う。それでは取り返しがつかない。
企業が人口減少に対応するには、ヨーロッパの企業の多くに見られるように高付加価値化と労働生産性の向上で勝負することである。量的拡大の発想を脱し、目指すべき目標を従業員一人当たりの利益高のアップに転換するのだ。それには、企業で働く個々人がこれまで以上にスキルを高めていく必要がある。
同時に重要なのが、人数が少なくなっていく若者にどんどんとチャンスを与え、社会全体としてイノベーションの機運を盛り上げることである。資源小国の日本が技術的優位性を失ったならば、世界を相手にすることはできない。
コロナ禍はデジタル化の遅れをはじめ「国力の衰え」を浮き彫りにしたが、いまの日本は先進国であり続けられるかどうかの分水嶺にあると言ってよい。いつまでも過去の栄光や“古ぼけた成功体験”にとらわれるならば、日本人は確実に貧しくなる。
われわれに残された時間は決して多くないが、間に合わないわけではない。改革の方向を間違えることなく行動に移す時である。