※本稿は、藤枝一也ほか『SDGsの不都合な真実』(宝島社)の一部を再編集したものです。
ビジネスチャンスであれば独占したいはず
SDGsを広めたいコンサルタント等の専門家は「SDGsはビジネスチャンスです」「国や政府だけでなく、市民、企業などあらゆるセクターが取り組まなければなりません」「大企業だけでなく中小企業にも欠かせません」と繰り返す。
しかしながら、ビジネスチャンスとは本来、気がついた人が誰にも言わず秘かに取り組むことで利益を得るものである。したがって、国連が作成し全世界に公開されている17分類169項目の文書がビジネスチャンスになるはずがない。仮にビジネスチャンスであれば、全企業に普及させるのではなく、早く知った企業が独占したいはずだ。「SDGsはビジネスチャンス」と言うコンサルタントや専門家は、ビジネスの鉄則を知らないと公言しているようなものだ。
ビジネスチャンスではないので、日本企業の優秀なビジネスマンたちが「何から手をつければよいのかわからない」と悩むのも当然だ。そこへ「どの目標に貢献しているかを整理しましょう」「御社はすでに3つもSDGsに貢献していることがわかりましたね! 素晴らしい!」とコンサルタントが指導するので、企業側は胸に17色のバッジをつけるだけでSDGsに貢献しているような気分に浸れるのだ。
本質は「大胆かつ変革的な手段をとる」こと
SDGsの「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」前文には以下の文章がある。
(外務省ウェブサイトより抜粋。太字は筆者)
「誰一人取り残さない」というフレーズがクローズアップされがちだが、むしろ重要なのは「緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとる」だろう。現在の人類の活動は持続可能ではないので、行動を変革することこそ重要――ここがSDGsの本質なのだ。しかしながら、現実には何ら行動変革を伴わず、「我が社はSDGsに貢献しています」と喧伝する事例が再生産されている。