※肩書き、年齢は掲載当時のものです。
「忖度人事」が疑われる2人の降板
NHKの顔である有馬嘉男(55)と武田真一(53)が3月いっぱいで降板させられる。
政権に批判的な2人だから、NHK首脳陣が菅官邸に忖度したのではないかといわれている。
この突然の降板と、今問題になっている菅義偉の長男・正剛が、総務官僚たちを接待漬けにしていたこととは、根っこでつながっていると思う。
それについては後述するとして、有馬と武田の降板理由から見てみよう。
昨年10月26日の臨時国会が開幕した日、菅は『ニュースウオッチ9』(以下『ウオッチ9』)に出た際、有馬は、問題になっている日本学術会議の任命拒否問題について質問を重ねた。
すると菅は、最後のほうではややムッとした様子で、「説明できることと、説明できないことがある」といった。
私はビデオに録ってあるものを見返してみたが、何ということのないやり取りである。
「NHK執行部が裏切った」と官邸が抗議
だが、週刊文春(2/25日号)によると、放送直後に山田真貴子内閣広報官から原聖樹政治部長に抗議があったという。どうやら、「所信表明の話を聞きたい」といって呼びながら、学術会議問題について聞くなんて、「NHK執行部が裏切った」と考え、菅官邸が怒ったそうだ(これについて2月25日に衆院予算委員会に参考人として招致された山田は、NHKにその件で電話をしたことはないと答弁している)。
質問内容を事前に提出して、役人がつくったペーパーを読むだけの出来レース会見しかできない菅にとっては、想定外の質問が許せなかったのではないか。
その頃から局内では有馬降ろしが始まったそうだが、表向きは、夜のニュース番組は軒並み女性キャスターだから、『ウオッチ9』も和久田麻由子をメインに据えるというもので、有馬の次に来る田中正良元ワシントン支局長は補佐役に回るそうである。
和久田はたしかに原稿を読むのはうまいと思うが、MCとしての能力にはやや疑問符がつくと思う。
一方の武田のほうはどうしてなのか。彼は『ニュース7』のMCを9年間務めたほか、『クローズアップ現代+』(以下『クロ現+』)のキャスターも担当していた、名実ともにNHKを代表するアナウンサーである。
武田は家族仲が良く、子どももまだ小さいようだが、今回の異動で大阪放送局へ単身赴任させられるそうである。明らかな左遷人事ではないのか。
二階幹事長への質問は不興を買うようなものだったか
しかし、武田の降板理由もまた不可解なものだ。1月19日の『クロ現+』で自民党の二階俊博幹事長をインタビューした際、新型コロナウイルス対策について、「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問した。
すると二階は、「今全力を尽くしてやっているじゃないですか。いちいちそんなケチをつけるものじゃないです」と凄んだというのである。
このことで武田は、二階の不興を買って降板&異動に追い込まれたと週刊文春は書いている。
この程度の質問で降板させるとしたら、NHKは官邸に忖度どころではなく、もはや権力側と一体化していると思わざるを得ない。