白日の下にさらされた番組への干渉
NHKの最高意思決定機関である経営委員会が自壊しつつある。
7月8日、NHK経営委員会は、NHKのかんぽ生命保険の不正販売報道をめぐって、経営委員会が2018年10月23日に執行部トップの上田良一会長(当時)に「厳重注意」した議事の全容を開示したと発表した。3年近く経ってようやく、である。
「NHKは存亡の危機に立たされるようなことになりかねない」
その当時、「厳重注意」を受けた上田会長は、「厳重注意」に至る経緯が表に出ればNHKはかつてない危機に直面すると警告したという。経営委員会が個別番組への干渉を禁じている放送法に抵触することを確信していたからにほかならない。
そして今、経営委員会がかたくなに公表を拒んできた議事録が白日の下にさらされ、経営委員会の番組介入は疑いようもなくなった。上田会長の「予言」どおり、執行部のガバナンス(企業統治)を問題視した経営委員会そのもののガバナンスが欠けていることが露見したのである。
放送法を遵守できない最高意思決定機関をいただくNHKは、組織としての根本的なあり方が問われる事態となった。それは、NHKが、受信料を支払っている国民のための「公共放送」か、権力におもねる「国営放送」か、を問われる重大局面に立たされることになったともいえる。
始まりは「クローズアップ現代+」
NHKのかんぽ不正報道問題の経過を振り返ってみる。
始まりは、2018年4月24日放送の「クローズアップ現代+」。日本郵政グループの郵便局員がかんぽ生命の保険を不適切な営業で販売していたことを報じた。
その後、SNSなどを駆使した続編を制作しようとしたところ、日本郵政グループが激しく反発。8月に入って、続編の放送は取りやめになった。
だが、それだけでは終わらなかった。