優しいのに評価されないG課長は何が悪いのか

【B】Aちゃんも知っている通りさ、G課長は誰にでもいい顔をしていたでしょう。自分にも甘かったし、部下にもさ。とりわけ女性の部下には甘かったもん。課長みずから始業間際の出勤でしょう。だから、遅刻やミスに対しても厳しく注意しないの。

仕事ぶりも、与えられたことを可もなく不可もなく処理していたって感じかな。言うこともコロコロ変わるし、期日に遅れてもおとがめなしだから、だらだらとやっていた。

いい意味では家族的だったの。飲み会では、課長自ら幹事と主役を引き受けてくれて、いつも動物柄のネクタイをだらんと緩めて大はしゃぎ。まぁ、楽と言えば、楽だったんだけどね。

【A】居心地のいい課だったんだね。うらやましいな。

【B】確かにね、「いい人」ではあったのよ。でもね、今だから言えるけど、仕事で頼りになる上司とはまったく思えなかったの。要するにえない課長だったの。

仕事の進め方や部下の指導に力強さや迫力がないからさ、仕事を通しての緊張感、充実感や達成感が全然なかったというわけ。わかるよね?

【A】うん、わかる、わかる、なるほどね。

それで、H課長に代わってどうなの? 優しそうな人だよね。私はH課長とは挨拶を交わす程度だけど、笑顔で「さん」づけして声をかけてくれるの。

C課長だと、機嫌が悪いときは挨拶しても無視されるわよ。

【B】まずね、G課長とは服装が違うの。

スリムな体型のH課長は、いつもダークスーツでしょう。それがまた上質の生地でさ、清潔感と何かしら上品さを感じるんだよね。ビジネス現場では、服装も戦略じゃない。見た目も大事よね。

オフィスのビジネスマン
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/kazuma seki)

G課長は、体型には眼をつぶっても、服装が安っぽかった。お腹がベルトに乗っている感じだし、ネクタイやワイシャツの趣味もちょっと……。そんなことも仕事につながっていくのかなあ? シャープさが無いもんね。

部下が評価するパーフェクト上司

【A】Gおじさんの話はもういいからさ、H課長の仕事ぶりはどうなの?

【B】すべてにおいて明確な目標を設定するわね。部下一人ひとりに対しても、一つひとつの業務に対しても。

そして、必ず、その仕事を何のためにやるのか、理由を丁寧に話してくれるから、やらされ感がない。指示や助言は具体的で説得的だし。単に「頑張れ」なんて言わない。

でもね、仕事の過程への目配りと気配りは本当に細かいよ。

【A】仕事に自信があるんだね。上司としての雰囲気はどうなの?

【B】ともかく話しやすいの。

仕事のことは当然で、個人的な悩みや相談であっても、いつでもどこでもウェルカムって感じ。仕事中でも必ず手を止めて、相手の顔を見て聴いてくれる。何かあれば別室で向き合って話してくれるの。超多忙のときでも、必ず時間を遣り繰りやりくりして相談に乗ってくれるから。

一言でいえば、人間としての安定感があって、仕事が出来るミドル。

でも、チームリーダーとして、威圧的に仕事を引っ張っていくというのではなくて、部下と同じ目線に立ってサポートしてくれるから、部下の気持ちを仕事に向けさせていくことが上手だなあ。

【A】ミスしたり失敗したりしたら怒らないの?

【B】部下のミスや失敗って、上司にとっては腹立たしいことでしょ。腹の底では「バカヤロー」「ドアホ」とえているかも知れないけれど感情的なものの言い方はしないよ。

「なぜそうなったのかな」「これからどうしようか。良い方法がないか、君と考えよう」って。何かね、部下や後輩のかたわらに一緒にいてくれる感じよ。責任は決して部下に押し付けないしね。

もちろん手抜きが原因の杜撰ずさんな仕事は、担当者の責任が厳しく問われることは当たり前だけどさ。でも、必ずフォローはするね。

【A】そういう変化が、Bちゃんの仕事観を大きく変えたのね。

【B】そうね、仕事を通して成長したいと考えるようになったかな。

意識が変われば、仕事への取り組み方が変わってくるでしょう。何かあればH課長に相談できると思えば、チャレンジ精神も生まれてくるしね。サポートしてもらって結果が出れば、手ごたえを実感できるよね。

褒められたり、周囲から感謝されたら、やっぱりうれしいじゃない。それがエネルギーになって、次の仕事にもポジティブに取り組めるようになる。

ようやく、仕事をするおもしろさを味わえるようになった感じ。