デキる上司のもとでは残業も増えないワケ

【A】じゃあ、残業も増えたでしょう?

【B】意外に残業は、たいしたことはないの。H課長は時間管理やスケジュール管理も能力の一つと考えているから、仕事への集中と時間の工夫を課の全員に呼び掛けているし、自ら実践しているよ。

H課長は早朝出勤で誰よりも早いの。警備員さんの話によると、わが社で一番みたい。それがわかると、不思議なもので自然に課全員が始業30分前には揃っちゃうの。

各々の仕事の状況を共有化させているから、どうしても残業が必要なときには誰かがヘルプしてくれるようになった。もちろん、私もするよ。

ラップトップで働く若いビジネスマン
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Tomwang112)

【A】仕事への気持ちって、上司でそんなに変わるんだね。

私もH課長に相談してみたいなぁ。でも、部下でもないし変だよね?

【B】全然、大丈夫だよ!

C課長には内緒で相談に乗ってくれるよ。でも、過剰に踏み込んでも来ないからさ。

外食が趣味だから、何かご馳走してくれるかもよ。

上司自身も部下に育てられている

部下や後輩と誠実に向き合い、その成長を助けることなど、ミドルであれば至極当然のことではないか。しかしながら、これまた私の独断と偏見によれば、現実はそうではないことが多いように思われる。

ミドルに余裕がないのか。それとも能力がないのか。もともとその気がないのでは。何よりも「育ってほしい」という強い思いが必要である。

他方、学生と共に学びつつ教師も育つように、ミドルも部下に育てられるという謙虚な姿勢を併せ持たなければならない。統制と命令に基づくような、一方的な押し付け型の教育や指導をしても、部下はもちろん、何より自分のためにならない。何事も双方向のやり取りが重要だ。

目の前の相手を尊重し、期待し、信じることこそが、育てる前提条件ではないか。

仕事の過程を詳細に観察していて、適切な助言や助力を与える。

減点主義に陥らず、わずかであっても、その場その場で加点してあげることだ。焦らずに成長を待つ姿勢である。

自分の時間を使って部下の話を真剣に聴く。相談には可能な限り乗る。出来ることは最大限してあげる。出来ないことは、その理由を説明して納得してもらう。

一人の捕手がさまざまなタイプの投手の球を受けるように、部下の性格や気質あるいは能力は、一人ひとり異なる。それゆえ、ミドルは、部下一人ひとりに対して個別の対応をしなければならない。スピードやコントロールなどから、捕手が先発投手の今日の最も有効な勝負球を探っていくように、さまざまな角度から部下に質問を投げかけて、仕事上の問題点や本人の課題を絞り込んでいく。

すなわち、ミドルは、観察眼に優れた聞き上手そして質問上手にならなければならない。

そして、学生が「この先生の下で学びたい」と思うように、部下や後輩が「この人についていきたい」「この人と仕事がしたい」と、本当に思ったときから、すべては始まる。この関係性を構築するまでは、ミドルは、部下一人ひとりの仕事基盤を整えることに力を注がないといけない。