夏には「永久脱毛」の広告がやたらと目立つ。ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンさんは「ドイツでは、ワキの毛をはやしたノースリーブの女性を見かける。女性だからといって肌をいつもツルツルにしておく必要はないはずだ」という――。
鏡を見て微笑むノースリーブの女性
写真=iStock.com/RyanKing999
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日本人は女性のムダ毛に敏感すぎる

暑い日が続いています。夏は肌の露出が増え、女性にとっては「素肌」が気になる季節でもあります。とはいえ日本では、ノースリーブを着る女性の肌はいつもツルツルで、どこを見ても「毛」は見当たりません。

それほど日本の女性は「毛」に敏感だといえますが、そもそもワキや腕の毛は「絶対にあってはならないもの」なのでしょうか。

今回はそんな気になる「毛」について海外と比べながら考えてみます。

まず、海外との違いで驚かされるのは、電車内の広告。日本で電車に乗っていると「毛」にまつわる広告の多さにびっくりします。男性の薄毛対策としての育毛剤やカツラの広告はもちろん、女性をターゲットとした「永久脱毛」の広告がやたら目立ちます。

脱毛にまつわる広告で気になるのは、「女性はやっぱりツルツルのお肌にしなくては」「脱毛で綺麗になれば夏も堂々とできる」などと、脱毛がデフォルトでありエチケットであると女性に思わせている点です。

これは人の劣等感をあおり、消費意欲を喚起する「コンプレックス広告」と呼ばれるようになり、昨年は、大手刃物メーカーが打ち出した、剃毛や脱毛を問い直す広告に反響が広がりました。

とはいえ、こういう動きは一部であり、かつ最近のこと。筆者は約20年前に日本に来ましたが、当時、脱毛の技術こそ今のように進んでいなかったものの「毛があることイコール恥ずかしいこと」だという価値観は今と同じでした。

筆者は来日してから長い間、「そういった価値観に洗脳されてたまるものか」と抗ってきたところがあります。そのため腕の毛は長いあいだ「そのまま」の状態で、筆者は特に気にしていませんでした。

ところが日本で暮らしているうちに、たとえ腕であろうと女性が毛を生やしていると、よほど精神的にタフではない限り厳しいものがあることも分かってきました。