コロナ禍を乗り切るには、体のどこを鍛えればいいのか。『最高の体調を引き出す 超肺活』(アスコム)を出した順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「筋トレよりも『肺トレ』をしてほしい。肺は、心臓や全身の血管の健康に深く関わっている。コロナ禍を乗り切るためにも肺を鍛えたほうがいい」という――。
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写真=iStock.com/Udom Pinyo
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新型コロナが教えてくれた“肺”の大切さ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、ECMOと呼ばれる特殊な医療機械が、広く一般の方々にも知られるようになりました。

エクモは、重症患者を救う「最後の切り札」として報じられていますが、実際にどのような役割を果たしているのかまで知っている方は、少ないのではないでしょうか。

エクモの役割とは、弱ってしまったある臓器をエクモが体外で人工的に代替し、その臓器を一時的に休ませて回復や治療の時間を稼ぐことにあります。

ある臓器とは、普段私たちがないがしろにしてきた臓器・肺です。

私が外科研修医時代、エクモの勉強でもっとも驚いたのが、含まれているガスが、二酸化炭素か酸素かによって変わる「血液の色」についてでした。

二酸化炭素を含んだ濁った血液が、人工肺を通過すると鮮やかで健康的な色に生まれ変わるさまを見て、「肺」がいかに健康状態に大きな影響を与えているのかを思い知りました。

そして、知識としてはもちろん知っていましたが、「酸素は血液に乗って全身に運ばれていく」ということを、エクモを目の当たりにして痛感したのです。

そんな大切な臓器・肺がいま、病気にかからずとも悲鳴を上げていることを知っていますでしょうか?

今回は拙著『最高の体調を引き出す 超肺活』より、弱った肺が健康に与える重大な影響から、肺の機能を取り戻す方法までをお伝えします。

肺は20代から衰えはじめている

呼吸をするとき、空気は鼻や口から取り込まれ、喉(咽頭)と、声帯がある喉頭こうとうを通過し、気管へと入っていきます。

気管は左右に枝分かれして気管支となり、それぞれ左右の肺につながっていきます。枝分かれした気管支はさらに枝分かれし、最終的には直径0.5ミリほどの太さになります。気管全体を見ると、木を逆さまにしたような形をしているため、「気管支樹」と呼ばれています。

その気管支の先端にあるのが「肺胞」と呼ばれる、わずか0.1ミリ程度の部位です。肺の中におよそ3億から6億個あると言われています。

この肺胞が非常に重要です。