日本が連日金メダルを獲得しても忘れてはならないこと
7月23日に開幕した東京オリンピックは連日、日本勢が金メダルを獲得している。
最初の日本の金メダルは、柔道男子60キロ級の高藤直寿(28)だった。前回リオデジャネイロ五輪で銅メダルとなった雪辱を果たした。報道陣のインタビューには「豪快に勝つことはできなかったが、これが僕の柔道」と涙声で語った。これが実に良かった。
柔道男子73キロ級の大野将平(29)も期待通りに五輪連覇の金メダル獲得を達成した。同じ柔道で「きょうだいで金メダル」を目標にがんばった男子66キロ級の阿部一二三(23)と女子52キロ級の詩(21)は、兄と妹そろって見事に金メダルに輝き、夢を実現した。
ソフトボールでは日本がエースの上野由岐子(39)を軸に宿敵アメリカを制して優勝した。卓球新種目の混合ダブルスは水谷隼(32)と伊藤美誠(20)のコンビが勝ち、日本としては初めての卓球オリンピックの金メダル獲得となった。
驚いたのが、新種目のスケートボード女子ストリートでの日本史上最年少の金メダル。記者会見で「(ご褒美は)焼き肉です」と笑顔を見せた中学1年の西矢椛は、13歳10カ月26日での金メダル獲得だった。1992年のバルセロナ五輪の競泳女子200メートル平泳ぎを14歳6日で金メダルを獲得した岩崎恭子を抜いた。
国民を選挙のための票田としか考えていない
日本選手の金メダルの吉報は続き、この沙鴎一歩も原稿を書く手を止めてついテレビのライブ放映に夢中になってしまう。
なるほど、これが菅義偉政権の狙いなのだろう。菅首相はワクチン接種のスピードを上げることで新型コロナを収束に向かわせるとともに、東京オリンピック・パラリンピックを成功させ、その成功をテコに自民党総裁選と衆院総選挙に勝って首相を続投することを目指している。
首相官邸には「五輪が開幕すれば、国民はメダルの獲得に感激し、新型コロナ禍など忘れてしまう」との声がかなり前からあった。菅政権は国民を選挙のための票田としか考えていない。私たちを馬鹿にするのは止めてほしい。
たとえ東京五輪でメダル獲得が続いても決して忘れてはならない。東京オリンピックの開催中も新型コロナの感染は増え続け、緊急事態宣言下であることに変わりはない。金メダル獲得を喜ぶ声が上る一方で、重症化して苦しむ患者や、軽症で隔離状態となる感染者は多い。なかには運悪く死亡する人もいる。医療の逼迫も懸念される。