「開催の国民の賛否は割れたままで、政府の責任は重い」と毎日社説

7月25日付の毎日新聞の社説は「東京五輪とコロナ対策 感染拡大防止を最優先に」との見出しを掲げ、「1964年以来2度目となる東京オリンピックの競技が続く中、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない」と書き出し、こう指摘している。大きな1本社説である。

「大会の1年延期決定を主導した安倍晋三前首相や後継の菅義偉首相は、『人類が新型コロナに打ち勝った証し』にすると繰り返してきた」
「だが、世界はいまだ大流行の渦中にある。国内でもワクチン接種が遅れ、東京都には4度目の緊急事態宣言が出されている」

そもそも、新型コロナウイルスに「打ち勝つ」というのは、人間の思い上がりである。人類が誕生するずっと以前からこの地球上に存在していたのがウイルスだ。重要なのはワクチンと治療薬を駆使して、新型コロナとの共存を考えることである。ワクチンで人類が根絶できたウイルスは天然痘(痘瘡、疱瘡)のウイルスだけである。

WHO(世界保健機関)は1980年5月に天然痘を地球上から根絶したことを宣言し、当時、これでワクチンによってウイルスに勝てると考えた。しかし、それは間違いだった。翌1981年にはHIV(エイズウイルス)が人類の前に出現し、人の免疫を破壊してさまざまな症状を起こして死に至らしめるエイズという病が広がっていった。

毎日社説は訴える。

「菅首相自身が『異例の開催』と認めざるを得ないような状況である。宣言下の開催について、国民の賛否は割れたままだ。政府の責任は重い」

沙鴎一歩も間違いなく菅首相の責任は重いと思う。

菅政権は「五輪中断」も念頭に置いて行動してほしい

毎日社説は主張する。

「政府や大会組織委員会は、感染拡大を防ぐことを最優先すべきだ。大会をきっかけに、国内外で状況が悪化する事態は避けなければならない」

巨大イベントの五輪は選手や関係者らおよそ5万人が集まる。集まれば当然、新型コロナの感染は拡大する。オリンピックの開催と防疫は真逆にある。そこを菅首相はどう考えているのか。

毎日社説は「今回は開催の意義が問われ続けた。コロナ禍に苦しむ国民から『何のための五輪なのか』という疑問が噴き出した」「にもかかわらず、組織委や政府から明確なメッセージが出されないままだ」と指摘するが、菅首相にはメモ書きを読み上げるのではなく、自分の生の声で五輪の意義を語ってほしい。

毎日社説は感染対策の問題点を挙げる。

「選手らに対しては、外部と遮断した環境で感染を防ぐ『バブル方式』が採用されている。だが、空港や宿泊施設などで十分に機能していない」
「国内では感染の『第5波』が広がりつつある。現在の拡大ペースが続いた場合、東京の新規感染者数は8月初旬に過去最多の2600人規模になる計算だという。インドで初めて確認され、感染力が強いとされるデルタ株の増加も心配だ」

菅政権が第5波が起きていることを十分に認識し、確実な対策を採っていないことが大きな問題である。

毎日社説は訴える。

「感染者数が急増して医療体制の逼迫が生じるようなことがあれば、政府や組織委は競技の打ち切りを含め適切な対応を取るべきだ。その際の判断基準を早急に示さなければならない」

すでに医療体制が逼迫しつつあるとの情報もある。菅政権は「五輪中断」も念頭に置いて行動してほしい。