非エリートなのに最難関の東京大学に合格する学生がいる。彼らが育った家庭の共通点は何なのか。東京大学文学部4年の布施川天馬さんは「ほとんどの親は、子供が小さい頃に本の読み聞かせをしますが、それは教育目的であることが多い。でも、東大生の親は自分自身が本を読むのが好きで、子供もその親の影響で自然に本好きになり、東大合格に必須な読解力を身につけることができる」という――。

無名高校から東大合格する子の親がしていた「本の読み聞かせ」法

みなさんは、東京大学の学生には大きく2つのタイプがいることをご存じでしょうか。

ひとつは、開成や灘、桜蔭といった偏差値の高い中高一貫校出身のエリート。頭のいい小学生として難関の中学受験を見事突破し、その後も成長を続けた人たちです。

もうひとつは、偏差値が高くない全国的には無名な学校出身の非エリート。もともと学力は高くありませんが、工夫・努力によって「逆転合格」した人たちです。

僕は後者に属します。自慢できる話ではありませんが、小さい時から筋金入りの勉強嫌い。中高時代は、高3になるまで部活(吹奏楽など)やゲームに明け暮れ、ろくに受験対策の勉強をしていませんでした。

ちなみに高3時の模試の偏差値は55程度。東大受験生の中では、下から数えたほうがずっと早く、模試の判定は最低のEランクでした。

そんな僕のような非エリートかつ勉強意欲に乏しい高校生が奇跡的に東大の壁を突破する。そこにはさまざまな理由が考えられます。面倒見のいい教師との出会いや、親の献身、ライバルとなる受験仲間の存在など……。

多くのケースでは、そんな人々との出会いにより、モチベーションが急上昇しています。しかし、これだけではありません。僕は、これに加えて「幼い頃の親の育て方がひと味違うのではないか」と強く思うのです。

部活に明け暮れ、模試は最低E判定でも「国語」だけは強かったワケ

ここに『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(以下『一発逆転本』、プレジデント社)という本があります。

ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)
ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)

10人の非エリート系東大生とその親に「なぜ東大に逆転合格できたのか」を丹念に取材したインタビュー集です。実は、僕自身も取材されたのですが、出来上がった本を読むと、あることに気づきました。

それは、わが家を含め東大に逆転合格した10組の親子のすべてが、「読み聞かせ」を重視した子育てをしていたということです。試しに周りの東大生に聞いてみると、やはり「読み聞かせしてもらうのが大好きだった」という学生ばかりでした。それはエリート系、非エリート系の区別に関係なく、小さい時はみな読み聞かせをされていたのです。

もちろん、読み聞かせは、子供を持つ親であれば、ほとんどの方がするでしょう。でも、前出の『一発逆転本』を読むと「ひょっとして、東大へ一発逆転した家庭は、読み聞かせの質や量が、その他の家庭と違ったのではないか」という仮説が浮かび上がってきたのです。