「契約に立ち会え」「契約書に判を押せ!」ケアマネの意図とは
当時、深戸さんは、介護の仕組みをほとんど理解していなかった。親が介護保険証を持っているかどうかさえ知らなかった。そのためケアマネージャーやデイサービス、訪問介護や包括支援センターなど、ごく基本的な介護用語さえピンとこない。頭の中に「?」マークが浮かびながらも、言われるままに実家で介護保険証を探し始めた。
しばらくして、デイサービス担当者が実家へ到着し、両親のデイサービス利用の契約をすることになった。担当者が契約書を読み上げるが、深戸さんは契約内容のほとんどが理解できない。
読み終えると、担当者はなぜか深戸さんに契約させようとする。何となく不穏なものを感じた深戸さんは、父親本人に契約させ、自分は同意のサインのみにした。
「『父本人と契約するから立ち会え』と連絡があったのに、実際に行ったら、私に契約させようと誘導したことに違和感を覚えました。前日に突然電話してきて、いきなりその場で『契約書に判を押せ!』なんて、納得できません。今思うに、ケアマネさんもデイサービス担当者も、両親の認知症を把握していたからこそ、確実に利用料を回収するために、私を呼び付けたのだと思います」
この時点で、両親は医師から認知症との診断を受けてはいないものの、すでに母親は要介護1。それまで利用していたのはヘルパーのみだったが、この日新たにデイサービスと訪問看護を父親が契約。父親は要支援2と介護認定が下り、デイサービスと訪問看護を契約した。
この日の出来事が、その後の生活を大きく変えるきっかけになろうとは、深戸さんはまだ知る由もなかった。
以下、後編へ続く。