ふてくされていた娘が「やったー!」

移住後、娘に思わぬ変化があった。

「こっちに来てからも、学校が始まるまでは『全然楽しみじゃない』という感じだったんです。それがたまたま、コロナの影響で入学式がなくなり、オンライン授業から始まって。初回は緊張していましたが、翌日のオンライン授業は楽しみにしていたようでした」

開校したての大日向小はICT環境が整っていたこともあり、休校中もすぐにオンライン授業に対応してくれたという。娘は、オンラインを通じて少しずつ、友達や先生とのやり取りに慣れていった。「6月に『来週から学校行けるんだって』と伝えたときには、『やったー!』と素直に喜んでいたんですよ。登校初日には、とてもうれしそうにランドセルを背負って、うきうきと家を出ていきました」

内気な娘にとっては、オンライン授業がよい慣らしとなったようだ。また、変化は遊び方にも表れ始めた。

大日向小学校の体育館
提供=大日向小学校
大日向小学校の体育館

「保育園時代は、お休みのほうが好きな子でした。金曜日になると『やったー! 明日は休みだー!』って(笑)。今は、家で遊ぶのも好きだけど、日曜日になると、『やったー! 明日は学校だー!』という感じ。家以外の場所に楽しみを見出すようになったのが、娘の大きな変化かなと思っています」

家の安さとコロナ禍で費用は「プラマイゼロ」

家計の面から見れば、母子移住は単身赴任と似たような状況だ。やはり、毎月の支出は倍になったのだろうか。

「リフォームや家具の購入など、転居による一時的な出費と学費分を除くと、東京と長野の2世帯になったことによる支出増と、コロナで外出や外食・旅行が減ったことによる支出減で、プラマイゼロのような感覚です。夫がワンルームマンションへ引っ越したため、前の家より家賃が減ったことも大きいですね。

私は佐久穂町の中古住宅を東京では考えられないくらいの値段で購入しましたが、賃貸住宅の場合も、家賃は東京と比べたらだいぶ下がります」

一方で、東京時代にはなかった出費も発生した。

「冬場の燃料代は、これまでの3~4倍になりました。ただ夏場はクーラーがなくても過ごせるのでありがたいですし、近所に目移りするようなお店やカフェが少なく、仕事がほぼオンラインになったことで外出ついでにお金を使うこともなくなり、無駄遣いは減ったと思います」

学費は東京の私立よりも若干安い。入学金や施設維持費などを含めた年間の授業料が、東京の私立小は約70万円※1(加えて年間約65万円が、塾や習いごとにかけられている)に対し、大日向小は約54万円※2だ。

※1、※2 いずれも給食費や教材費、交通費などは含まない