娘が長野を出たとしても暮らし続けたい

やつづかさんは、佐久穂町に来て「すごくよかった」と話す。

「娘が楽しく学校へ通っていることが、何よりもうれしいですね。先生たちもとてもよく見てくださるし、保護者同士のつながりが濃く、私自身も楽しく過ごしています。自然豊かで、どこを見渡しても景色がきれいだし、地域の方々も歓迎してくれて、温かいなと思うことが多いです」

大日向小には2022年春、中等部(認可申請中)が開設される予定だ。やつづかさんは、卒業後のプランに関しても柔軟に考えている。

「卒業後の進路は、娘の意思を尊重したいと思っています。娘が『このまま通ってもいいよ』と言うなら中等部へ進むし、高校をどうするかは、今はいろいろな選択肢があるので、状況に応じて柔軟に対応していきたいです」

やつづかさんは、インターネットを活用して、町からほとんど出ることなく仕事を続けられている。町の中小企業経営者の依頼で働き方についての講演をするなど、少しずつ地元での仕事も開拓しているそうだ。やつづかさんのほかにも、移住してきた保護者や職員がおのおののスキルを活かしてカレー店や書店、ドーナツ店などをオープンさせ、閑散としていた町の中心部が活気づいてきたというから驚きだ。

長野の市街地の交差点
写真=iStock.com/Bim
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校長がコロナ禍で感じた「変化」

新学期や入学に合わせて母子(父子)移住した家庭のなかには、もう一方の保護者が後からやってくるケースも多いという。桑原校長は「テレワークの影響は大きいでしょうが、とてもうれしいこと」だとほほ笑む。

ほかにも、父親が新幹線通勤する前提で佐久平駅周辺に自宅を構えたものの、結局はテレワーク中心になり2段階移住で佐久穂町へ引っ越してきた家族や、佐久穂町への移住を検討する中で「学校を調べていたら大日向小を見つけた」という人もいる。

「1年目は大日向小への入学が先で移住は後、という方が多かったが、2年目や3年目は、コロナ禍で『生き方そのものを見つめなおそう』という方が増えた印象があります。
町自体が「自律し多様なコミュニティーが人々のくらしを支え、挑戦や行動を支援するまち」というスローガンを掲げているので、住民の皆さんも非常に温かい。もちろん一概には言えませんが、そういった意味でも、佐久地域は移住先として人気です」(桑原校長)