大きな社会的影響を持つタレントは「準公人」

タレントのプライベート写真については、「公道」上の写真であれば許容されるというのが日本だけではなく、世界の芸能報道を見てもスタンダードな考え方といえるだろう。それは、「メディアに出るタレントは準公人であり、“ある程度の”プライベートが報じられることもありうる」という考え方があるからだ。

政治家など社会的影響力の大きい公人はプライベートを含む全てをメディアに検証される立場にある。タレントが準公人(みなし公人)とする考え方は、彼らの言動が大きな社会的影響力を持っているから故であり、福山発言の波紋の大きさはその一例ともいえる。

子どもの乗ったベビーカーを押して地下通路を歩く母親
写真=iStock.com/kieferpix
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タレントは芸事以外にも、結婚・離婚、育児といったプライベートがビジネスに直結する。私生活を切り売りするというタレントの特質と、その発言が社会的影響力を持つという準公人という立場を踏まえた上で、週刊誌はタレントのプライバシーを報じている。準公人を検証するという「社会的意義」、そしてより多いのが後述する「読者ニーズ」に応えることを目的として「タレントのプライバシーについて彼らの都合の良いことだけではなく、都合の悪いことも書く」というのが週刊誌のスタンスなのである。

「子供の顔にはモザイク」という“業界内ルール”

一方で、「どこまでプライバシーを報じるか」という点については、さらなる議論が必要だと感じている。特に今回の福山のケースのような、「子ども」の報じ方は、記者の間でも意見が分かれるところだ。

「写真週刊誌の場合は、家族や子どもなどのプライベートショットは『タレントの商品価値の1つ』と考え、記事として掲載をしている。もちろん無秩序に掲載しているわけではなく、そこには『子どもの顔等にモザイクをかける』『事務所に写真掲載の事前通告をする』など、報道するに当たっての“業界内ルール”というものが存在しています。

『FRIDAY』編集部は記事を掲載するに当たり、ルールに従い福山の事務所に母子写真が掲載される旨を事前通知しており、配慮の上で記事を出したと聞いています」(芸能ジャーナリスト)

今回の『FRIDAY』記事は、ワイドショーなどで「子どもの写真を無断で掲載した」と批判されているが、誌面やウェブを読み比べると、一定のルールにのっとっていることが分かる。

1.子どもに全身モザイクをかける。顔だけではなく全身をモザイク加工しているのは、性別も分からないようにするためとみられる。

2.公道上で撮影されている。自宅や学校内ではなく、あくまで公道に出てきているところを撮影しており、「盗撮」とはいえない。

3.通学路やジムなどを特定されない写真を選んでいる。カメラマンは数か所で撮影しているはずだが、特徴の薄い場所の写真が使われているのは、撮影場所を特定されにくくするためと思われる。

4.母子写真は雑誌のみで掲載する。『FRIDAY』は雑誌、ネットメディアの両方を持つが、ネット記事には母のみの写真が使用されている。ネットに子ども写真を掲載すると、アーカイブが残ってしまうことを考え、ネット記事には子ども写真を使わなかったとみられる。