だがドローンに(たとえば急速に進歩している顔認識機能とAIを組み合わせることで)人間並みの認知能力を与えれば、さほどの大物ではない独裁者やテロリスト、凶暴な10代の若者などが、米軍が使用しているような高価なドローンの何分の一かの値段で、強力な兵器を手にすることができるようになる。

そのようなドローンの開発に対抗するための具体的な措置を今すぐ取らなければ、安価なドローンを自律型の殺人兵器にする方法が、近いうちにインターネット上で公開されることになるだろう。

これまで、AIを使ってモノや人の顔を正確に識別することは難しかった。画像に文字を追加してわずかに変更するだけで、アルゴリズムに混乱が生じやすいためだ。たとえば画像認識システムにリンゴを果物と識別させるための訓練では、リンゴに「iPod」と印刷した小さな紙片を貼り付けただけで、システムが簡単に騙されてリンゴをiPodと識別した。香港の民主化デモの参加者たちは、政府の顔認識システムを混乱させるために顔にペイントを施した。

AIを搭載した認識システムは、霧や雨、雪やまぶしい光などの環境要因によって大幅に精度が落ちる可能性もある。そのため現在の開発レベルならば、ドローンに対する防御として、比較的簡単な対策で認識システムを混乱させることができるかもしれない。

だが巻き添え被害や罪のない犠牲者を出すことをなんとも思っていない者たちにとって、システムの精度はさほど大きな問題ではない。彼らが飛ばすドローンは、どのみち標的(とおぼしき対象)を殺害するようにプログラムされている可能性がある。

911同時テロさえ色褪せるような被害

それに、個々の標的に狙いを定めるドローンに対してどんな防御策を取ったところで、ドローンが新たな大量破壊兵器として配備されるのを阻止できるわけではない。爆発物を搭載したドローンの大群がスポーツイベントや都市部の人口密集地域に突っ込んで爆発すれば、多くの死者が出ることになるし、それを阻止するのは難しいだろう。

現在複数の企業が、危険な飛行物体やドローンに対抗するシステムを販売しており、進歩的な軍では既に、ドローンの制御システムを妨害する対抗措置を導入している。だが今はまだ、ドローン1機を撃墜するのも難しい状況だ。

イスラエルが最近、ドローンを航空機から破壊できるレーザー兵器の実験に成功したが、ドローンの大群をまるごと撃墜するのは、まだ非常に難しい。そして新世代の自律型ドローンに対抗するには、通信を遮断するだけでは不十分だ。無用の混乱や被害を回避するためには、これらのドローンを安全に着陸させるための方法を開発することが不可欠だ。

自律型ドローンは、大きな被害をもたらすことを重視している集団にまったく新しい可能性を開くものとなる。一日で100カ所に攻撃を行うことができれば、9.11同時テロさえ色褪せて見えるような被害がもたらされることになる。