だが、改めて言いたい。値引きはダメだ。

第1に、値引きをしたからといって、後日、それに見合う売り上げ増につながることはまずない。たとえば、10%の値下げをしたら、仮にがんばって20%多く売っても、しょせん本来得られたはずの利益にしかならない。そんな売り上げ増は不可能なだけでなく、そんな売り方をしているうちに、顧客には「そのうち、また値引きするさ」と期待を抱かせることになる。

「それなりに払うけれど心強い、頼もしい」そんなブランドがベスト

「上得意客に報いたい」とか「おもてなしの気持ちを表したい」という理由であっても、値引き策は使ってはいけない。値引きをすることで、「普段は高値を吹っかけているのか」と見られても仕方ないし、せっかくの得意客が売買だけの関係になりかねない。おまけに値引きは、商人としての腕前やブランドとしての商品を安っぽく見せてしまう。

ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)
ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)

むしろ、大切な伴侶のように、顧客との関係を捉えるべきだろう。「顧客の暮らしに何らかの価値をもたらすには、どうしたらいいのか」と考えるべきだ。価格と価値のバランスをとることに関して、もっと広い視野で可能性を模索するのである。

仮に商品に高めの価格を設定しても、その分、顧客を魅了する手段があればいいのだ。競合他社は、徹底的な安値を狙って消耗戦を繰り広げている可能性がある。

今ではすっかり有名になった高級ビール「ステラアルトワ」の「reassuringly expensive」(「頼もしいくらい高い」の意)という広告コピーを思い出さずにいられない。「それなりに払うけれど心強い、頼もしい」と思われるブランドをめざすべきである。

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