メルセデス・ベンツ日本は2019年から自社でレンタカー事業を展開している。その価格は驚くほど安い。新車価格610万円の「CLA 200」が、保険込みで6時間1万2000円だ。なぜ絶対に儲からない価格設定で、レンタカー事業を行うのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんが分析する――。

こんなに安かったら、ベンツを買う人が減るのでは?

テレビ東京の『カンブリア宮殿』で、メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長がベンツのレンタカーの利用者が今年は去年の3倍に増えているという話をしていました。

ベンツは「メルセデス・ベンツ・レント」という直営のレンタカー事業を展開しています。これが、調べてみると結構安いのです。たとえば、東京・品川にある「メルセデス・ベンツ・ミー@品川プリンスホテル」で、2番目に安い「CLA 200 d Shooting Brake」を借りる場合、6時間で9000円、保険込みで1万2200円です。それで疑問に思ったことは、こんなに安くベンツがレンタカーできたら、ベンツを買う人は減らないのか? ということです。この疑問、記事の後半できちんと検討してみます。

実はちょうどベンツに乗りたかった事情がありました。ここ数年間、自動ブレーキやオートクルーズなどの運転支援機能がどんどん性能向上しています。それをなるべく体験するように心がけている関係で、最新のベンツにも乗ってみたいと思っていたのです。

予約してわかった「意外と使う人が多い」

そこでさっそくWebで予約を入れることにしました。社長が「売上が去年の3倍」などという場合、一般的には去年が全然ダメだったような盛った話が多いので、ベンツもそんな感じじゃないかとなめていたのですが、私が間違っていたようです。

予約の際の第一印象は、

「結構、使う人多い!」

でした。土日の予約が埋まっていたので、平日の午後に予約をいれたのですが、それでも借りられる車種は残り少なくなっていました。

ちなみにこの原稿を書いているのが月曜日。今週末の金曜日で調べると六本木の店舗の4台のベンツはすべて予約済、品川プリンスの店舗の7台のうちやはり4台が予約済でした。

さて、私は前述した「CLA 200 d Shooting Brake」という車種とお値段で、平日午後のドライブ&お買い物に出かけることにしました。

貸出の際に店舗のスタッフから使い方を一通りレクチャーしてもらいます。ベンツを借りたその日はあいにく午後から台風並みの暴風雨になるという天気予報。興味があったので質問したところ、ベンツの運転支援機能はレーダー方式なので今日のような荒天でも安心して作動するのだそうです。私が普段乗っている日本車の場合はアイサイトという2つのカメラで道路の状況を把握する方式で雨天は苦手なのですが、さっそく性能の違いを堪能できそうです。

ベンツというと昭和の世代には左ハンドルのイメージもあるのですが、借りた車はちゃんと右ハンドル。操作は日ごろ運転支援機能を使っているドライバーにとっては日本車と変わりません。ただひとつやっかいだったのが、ウィンカーが左右逆で、しかも右側がワイパーではなくシフトレバーになっていること。ウィンカーを出したつもりでギアがニュートラルになってしまったりするのは、ベンツ初心者として要注意事項でした。