遠く離れていた私とベンツの距離が縮まった

それで運転してみて、

「ベンツ、最近はすごいな」

と思ったというのが次の要素です。実は私が借りたCLAクラスの車はディーゼル仕様でした。ベンツのディーゼルというと思い出すのは40年前のバイト先の社長です。

燃費も安いし買った値段とほとんど同じ値段で売れるという理由で、彼は中古のベンツのディーゼル車を2年毎に買い替えていました。仕事の関係でよく乗せてもらったのですが、当時のディーゼルエンジン特有のポンポンポンポンというエンジン音が耳に響いたのを覚えています。ところが今のベンツのディーゼルは全然違います。ディーゼルなのにとにかく音が静かで驚きました。

そしてあの本革シートの乗り心地のよさ。私は自他ともに認める「車はゲタと同じ」と考えるタイプの人間でした。外資系コンサルティングファームで高い給料をもらっていた当時に乗っていたのが新型カローラ。ベンツなど一番遠いところにいる消費者でした。

しかし還暦も近くなってくると「そろそろ贅沢もいいかな」と思い始めます。車もだんだんグレードが高い車種に買い替えるようになっているのですが、そうなると乗り心地の違いがわかってきます。消費者とは贅沢に育つものなのです。

ベンツのレンタカーを借りる際のアンケートで「この車種に興味があった」にチェックを入れたのですが、スタッフのお兄さんが「よろしければ」と言ってカタログと見積書をくれました。私の借りたベンツは諸経費込みで購入価格は610万円。今乗っている車は400万円ですから、遠く離れた場所にいた私とベンツの距離は、かなり縮まってきているようです。

テストドライブ
写真=iStock.com/DragonImages
※写真はイメージです

この6年間の実績が答えだ

結局のところ、ベンツがレンタカーを展開するとベンツの売上は減るのでしょうか? それとも増えるのでしょうか?

ベンツのレンタカーを借りる人で、買いたいけど買えなくなった人や、借りた方が安いからという理由で借りる人が多ければ、それは代替財でベンツの売上は減ります。一方でわたしのように、これまで敷居が高かったけど一度乗ってみたかったからという人が借りに来るケースが多いのであれば、それは補完財でベンツの売上は増えそうです。

そして実のところはどうでしょう。日本のベンツは上野社長がこれまでベンツに乗ったことがない消費者が気軽に訪ねて来られるような店舗を作り始めてからまた成長を始めました。そして外車部門でここ6年連続の首位を走っている。つまりこの事実こそが答になっているようです。

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