ジャムが売れればパンも売れる、冷食ブームならレンジも売れる

ちなみにそれ以外のケースでは「独立財」と「補完財」があります。「独立財」とはふたつの売れ行きの間に関係がないもの。たとえばタピオカミルクティーがバカ売れした当時、その理由がインスタ映えにありました。そのような理由でタピオカ需要が増えた場合、同じ飲料でもセブン‐イレブンのアイスコーヒーの売上は下がらないかもしれない。これは「独立財」です。

そしてベンツのレンタカーに乗った人が、それがきっかけでベンツが欲しくなったとしたら? これが「補完財」です。たとえばジャムが売れればパンも売れますし、冷凍食品ブームが来れば電子レンジも売れる。お互いが補完財ならばベンツも売上が増えるわけです。

パンとジャムの朝食
写真=iStock.com/masa44
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タワマン住民が高級ホテルに泊まっても、タワマンの価値は変わらない

ということで、この考え方のどれにベンツが当てはまるのかを考えてみましょう。

シンプルに考えると高級な商品が安価にレンタルできるようになると、販売需要は下がります。レンタルという選択肢ができることで販売商品との間の関係は通常は代替財になります。賃貸マンションと分譲マンションの関係で、もし賃貸相場が極端に下がった場合は、分譲マンションは売れなくなるか大幅に値下げしなければならなくなります。

一方でユーザーが異なるか、使い方が異なる場合は、独立財としてふたつの売れ行きに影響が起きません。タワーマンションの住民が旅行先で高級ホテルを利用する場合、これは夜眠る場所という共通点があってもふたつの財の関係は独立で影響を受けません。そのタワーマンションを空けている間、民泊で短期間貸し出す場合にも、借りる人がすべて外国人旅行客だとしたら、それもやはりタワーマンションの分譲価格を引き下げたりはしないでしょう。このケースなら独立財となるわけです。

そして一度使ったらファンになってずっと使うようになる場合はレンタルと販売、ふたつの財の関係は補完財になります。着物をレンタルで使っているうちに、だんだん着物が好きになり、着物で活動する日も増えて、ついには着物を何着も購入するようになるといった場合が補完財のケースです。