統計上は、高身長の人ほど、健康、生涯賃金、社会的地位に恵まれている。科学者のバーツラフ・シュミル氏は「身長と所得が相関関係にあることは、1915年に初めて立証され、以来、インドの炭坑作業員からスウェーデンの企業のCEOまで、多岐にわたるグループを対象にした調査によって、たびたび裏付けられている」という——。

※本稿は、バーツラフ・シュミル著、栗木さつき・熊谷千寿訳『Numbers Don’t Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!』(NHK出版)の一部を再編集したものです。

息子の身長を柱につける母親
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月齢や年齢で予想される身長が正確にわかる時代

人間の体格に関する調査の例に漏れず、身長に関する研究が始まったのもだいぶ遅かった。フランスの弁護士、フィリベール・ゲノー・ドゥ・モンベヤールが、1759~77年まで、息子の身長を生後すぐから半年おきに18歳の誕生日まで計測し、それをビュフォン伯爵がかの有名な『博物誌(イストワール・ナチュレル)』の1777年刊行の巻で表にして発表したのである。

ところが、モンベヤールの息子は当時としては長身だった(18歳のころには現代のオランダ人男性の平均と同じくらいの身長になっていた)。そして1830年代になると、ようやく人間の身長と、幼年期から青年期にかけての成長のデータが体系立てて大規模に収集されるようになる。その功を立てたのはエドュアール・マレとアドルフ・ケトレーという2人の研究者だった。

以来、人間の身長に関してはあらゆる側面から研究が重ねられてきた。年齢ごとに予測できる身長の伸びや身長と体重の関係、栄養が身長に及ぼす影響、遺伝的要因、はては成長期における性差まで、じつにさまざまな研究がおこなわれてきたのだ。

その結果、月齢や年齢で予想される身長(と体重)が、かなり正確にわかるようになった。たとえば、アメリカ人の若いお母さんが身長93センチメートルの2歳男児を連れて小児科に行けば、息子さんは同年齢のお子さんの90%より背が高いですよ、と言われるだろう。