バイデン政権の経済政策はチャンス

半導体に加えて、自動車関連の分野でも韓国企業は対米直接投資を発表した。今後5年間で、現代自動車は74億ドルを投じEV生産能力の増強などに取り組む方針だ。車載バッテリー分野ではLGグループがGMと、SKグループがフォードと合弁会社を設立してバッテリー生産を行う予定だ。

以上は、半導体、EV、車載バッテリーという世界経済にとって重要性が高まる先端分野で、韓国の財閥系大手企業が事業体制の強化を目指していることを示唆する。

フランス・パリの電気自動車の充電ステーション
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他方で、政権が発足して以来、米国のバイデン大統領は、半導体や高容量バッテリー、医療資材、鉱山資源などに関して自国を中心とした供給網の整備を重視しているようだ。そのために、バイデン政権が米国に直接投資を行う海外の企業に補助金を出す可能性もある。それは、韓国財閥系大手企業が対米直接投資を表明した要因の一つだろう。

「経済政策は間違っていた」与党からも批判

そのほかにも、韓国の財閥系大手企業が対米直接投資を表明した要因は考えられる。その一つとして、韓国国内の事業環境がより厳しくなっていることは軽視できない。

左派の政治家として市民団体や労働組合などから支持されてきた文大統領は、過去の政権下で蓄積された経済的な格差などの解消(積弊清算)を重視した。その具体的な取り組みに、最低賃金の引き上げや労働関連の法律改正などがある。2018年に韓国では最低賃金が前年から16.4%引き上げられ、2019年も最低賃金は同10.9%上昇した。また、法律の改正によって、解雇された人や失業者の労組加入も認められる。

文大統領の経済政策は韓国経済にマイナスの影響を与えている。最低賃金の引き上げによって中小企業などの経営体力が低下し、雇用は減少した。与党「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表は、「最低賃金引き上げによって経済底上げを目指した文氏の経済政策は間違っていた」と批判している。