消費者は2、3秒で買うかどうかを決める

寺島さんが言うとおり、現代の消費者は「コンビニで、商品棚の前に立ってから2、3秒でどの商品を買うかを(直感的に)決める」とも言われ、多くの場合は「分かりやすさ」が求められる。パッケージについても、単にオシャレなだけでは難しく、「ネーミングからすぐに味や機能が想像できる」や「透明なペットボトルで、中身の飲料が見えている」などが重視されます。

一方、LOHACOが掲げた「暮らしになじむ」デザインがもし実現すれば、「飲料をまるでお気に入りの服を選ぶように手に取ってもらい、『このデザイン(の飲料)に触れると気分がアガる!』などと喜んでもらえるのではないか、と思いました」と寺島さん。

また、コンビニやスーパーの店頭販売と違うのは、ネット通販ではユーザーが「中味(成分ほか)」について、事前にじっくり説明を読んだうえで納得して買ってくれること。

ゆえに購入段階、あるいは買ったあとでカバンに入れて持ち歩いたり、デスクに置いたりしたときに、思わずワクワクするような“デザイン性”を大切にしたい、そんな思いから、「店頭での2、3秒に捉われず、自由に発想しよう!」と決意したそうです。

あえて選んだ苦難の道

もっとも「自由なデザイン」の発想だけにとどまれば、まだ楽だったのでしょうが……、寺島さんたちはあえて、驚きの挑戦に乗り出しました。

それが、商品パッケージのデザインを1つに絞らないこと。そして、デザインをあえて彼女たち自身が「手描き」することです。

「当初から、好きな服を選ぶようにボトルを選んでほしいとの思いがあった。社内で確認したところ、製造できる最大のデザイン数は、16種類でした。『だったら16パターン、すべて自分たちでデザインしよう』『手しごとのぬくもりが感じられる、手描きがいいね』となったのです」(寺島さん)

この発想が功を奏し、結果的にムーギーは「グッドデザイン賞2016」をはじめさまざまなデザイン賞を受賞。イベントの翌年2月からは、ネット通販での販売も始まり、その後はAmazonや楽天などでも売られるようになったのですが……、初回発売のパッケージデザイン(16種類)が決まるまで、寺島さんたちはなんと100点近くの手描きデザインを描き続けたそう。打合せの部屋の机や床に、並べきれないほどだったといいます。