太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電の普及が欧州などに比べて遅れている日本。これまで「再エネ発電は不安定で頼りない」「日本は欧州のような遠浅の海が少なく洋上風力の適地は少ない」などと否定的な見方が多かった。それは本当なのだろうか。脱炭素政策「カーボンニュートラル(CN)」への動きが加速し、再エネ発電への期待が高まっている。再エネ発電の「実力」を再エネ発電専業で国内唯一の東証一部上場企業、レノバの木南陽介社長に聞いた――。(前編/全2回)
レノバの木南陽介社長
撮影=安井孝之
レノバの木南陽介社長

今回の「脱炭素宣言」でパラダイム転換が起きた

——菅政権は昨年秋にCO2排出量を実質ゼロにする脱炭素政策「カーボンニュートラル(CN)」を2050年までに実現すると宣言しました。政府の計画では発電部門のCO2排出量も2050年までに実質ゼロにすることになり、再生可能エネルギーの比率は現在の倍以上の50~60%という数字も示されました。どのように受け止めていますか。

【木南】2019年にスペイン・マドリッドで開かれたCOP25(第25回国連気候変動枠組み条約締結国会議)で日本は地球温暖化対策に消極的な国に贈る「化石賞」を受けました。その会議に参加した小泉進次郎環境大臣の追い込まれた様子を考えると、日本は昔の産業レジーム(体制)のままだとみられたのだと思います。それが今回のCN宣言でパラダイム転換が起きました。20年もの間、環境分野で仕事をしてきた私にとっては、ようやくここまで来たかと大歓迎しています。

2050年に再エネ発電を50~60%にするという具体的な年限と目標が出たことを評価します。これまで日本は絶対に越えられそうな低いバーを再エネ発電の目標にしてきましたが、今回は目標にビジョンを込めた高いバーを掲げました。そこが大きく違います。

2030年の再エネ発電「40%」は手が届きうる数字

——確かにこれまでの再エネ発電の目標は低かったですね。見直しが議論されていますが、現行のエネルギー基本計画では再エネ発電の2030年の目標は22~24%です。ところが国際エネルギー機関(IEA)が発表した2020年の日本の再エネ発電比率はすでに前年比3%増の21.7%でした。9年後の目標値としてはあまりに低すぎますね。

【木南】4月に米国のバイデン大統領の呼びかけで開かれた環境サミットで菅義偉首相は2030年にCO2排出量を46%削減(2013年比)することを表明しました。それに伴って2030年の再エネ発電の目標も議論されていますが、「40%」という数字に収斂しつつあるのではないかと思っています。40%は結構頑張らなければならない数字です。私たち事業者は現実的な見方をするものですが、40%はオールジャパンで取り組めば、手が届きうる数字だと思います。

——あと9年ほどで倍増しなければいけませんが本当に可能でしょうか。