電源開発で必要なのは経済性と社会の受容性

——CNの実現に向けて原子力発電の再稼働を期待する動きが経済界の一部にはあります。どのように受け止めていますか。

【木南】レノバは再エネ発電の事業者なので、原発については詳しく知りませんし、言及する立場にはありません。ただ言えることは電源開発で必要なのは経済性と社会の受容性だと思います。再エネ発電のコストはこれまで下がってきましたし、これからも下がっていくでしょう。経済性は高まるはずです。

一方、私たちが最も大切にしているのは地域との「共存共栄」です。東京の再エネ発電のベンチャー企業である私たちが事業開発で過疎地に参上し、山を貸してほしい、漁場を貸してほしいとお願いする際に様々なハードルがあるのは当然です。地元と共存できる絵を書けるか、書いた絵を地元の人に提案し、理解してもらえるか、そして地元との共同事業にできるかが事業化の鍵を握っています。経済性と社会受容性があるかどうかが今後の電源開発を考える場合にはとても重要なのではないでしょうか。

——秋田県の由利本荘市沖の洋上風力発電は事業者公募手続きに入りましたが、地元との話し合いには苦労がありましたか。

【木南】開発を始めたのは5年前です。一緒に漁業の未来を考えることから始めました。調査の同意を取るまでに1年半かかり、その時点で地元との「共存共栄」を確認しました。その後3年がかりで、地元の船に乗って海域調査をしました。どんなところで漁業をされているのか、どんな海産物があるのか、産卵の時期はいつかなどをダイバーが海中のビデオもとって、調べました。それをもとに風力発電の設置後に「こういう漁場をつくればいいのですね」と地元漁業者と共存できる事業につくり上げてきたのです。

資源を海外に依存すれば、国富が流出するばかり

——再エネ発電だからといって地元が必ずしも大歓迎するばかりではないでしょうから、再エネ発電を増やしていくためには丁寧な地元調整が必須ですね。そう簡単に再エネ発電を増やせないのではないですか。

【木南】日本では再エネ発電は欧州ほど増えないのではないかという意見があるのを承知していますが、それで本当にいいのでしょうか。再エネ発電が増えないということはかなりの部分を依然として火力発電に頼っているということです。日本の場合、その燃料はほぼ海外に依存しています。

それに対して再エネ発電は太陽光にしろ、風力にしろ、いわば国内資源です。テクノロジーの発展でようやく海外に依存しないエネルギーの供給体制が可能になろうとしているのにいつまでも海外に依存し、国内で稼いだお金を海外に流失させていることになります。欧州が再エネ発電に大きく舵を切った背景には、天然ガスのロシア依存、石油のアラブ依存から抜け出したいという考えもあると思います。

再エネ発電を増やすことは日本のエネルギーの自立性を高めることにもなりますし、新たな産業を生み出す可能性もあると思います。(後編に続く

(聞き手・構成=安井孝之)
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