欧州などに比べて、日本は太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電の普及が遅れている。だが、ここにきて脱炭素政策「カーボンニュートラル(CN)」への動きが加速し、再エネ発電への期待が高まっている。再エネ発電の「実力」を再エネ発電専業で国内唯一の東証一部上場企業、レノバの木南陽介社長に聞いた――。(後編/全2回)
秋田県由利本荘市の洋上風力発電イメージ
写真提供=秋田由利本荘洋上風力合同会社
秋田県由利本荘市の洋上風力発電イメージ

240人の山林地権者に年間約1億円の賃料支払い

——再生可能エネルギー発電事業では地元との共存共栄を目指されていますが、どのような例がありますか。

【木南】岩手県北部の軽米町にある山林に約130メガワットの太陽光発電所が稼働中です。東京ドーム約100個分の広大な山林に太陽光パネルが設置されています。人口8000人余りの過疎地です。そこに400億円を超える投資をし、再エネ発電所をつくりました。2019年から運転を始めました。その結果、太陽光パネルのメンテナンスのために地元の方を雇用したほか、山林の賃借料を支払っています。240人の地権者の方に年間約1億円の賃料をお支払いしています。

一人当たりでは年間数十万円ですが、町長によると町内所得は建設が始まってからの5年間で約1.5倍に増えたようです。また町にも400億円の発電設備にかかる固定資産税が毎年5億円程度入るようになりました。未利用の山林からCO2排出量ゼロで電力が生まれ、雇用と所得を増やし、町の税収も増えたのです。軽米町始まって以来の大投資でした。CO2も削減でき、地元にお金も入るという一石二鳥です。

全国で2030年頃を目指して10GW程度の洋上風力発電が準備中

——3月に決まった荒廃農地の利用に関する規制緩和で農地への太陽光パネルの設置も増えるでしょうから、同じような例が増えてきますね。

【木南】政府は2030年時点で太陽光発電は88GW(標準的な原発で約80基分)に増えるという予測を出していますが、私は太陽光発電のポテンシャルはまだまだあり、100GWぐらいまで増えると見ています。

——再エネ発電で今期待されているのは洋上風力ですね。再生可能エネルギー海域利用法が2019年に施行され、政府が洋上風力発電を後押しし始めました。2020年12月に政府は洋上風力発電の導入目標として2030年までに10GW、2040年までに30~45GWという目標を掲げました。現在はほとんどゼロといえる洋上風力発電をそんなに増やせるのでしょうか。日本は欧州のように遠浅の海が少ないという指摘もありますが。

【木南】現時点で少なくとも言えることは全国で10GW程度の洋上風力発電のアセスメントが始まっているということです。それだけのポテンシャルはいまでもあります。それらがすべて2030年までに稼働するのは難しいでしょうが、10GW程度の洋上風力発電が2030年頃には具体化する可能性はあります。