欧州、中国に次ぐ洋上風力発電の導入国になる可能性

【木南】その後の2040年までに30~45GWという目標については私の大雑把な見通しですが、25GW程度は水深40メートルほどの海底に支柱を立てる着床式、それ以上は海面に浮かべる浮体式になるのではないかと思います。もしも2040年の政府の目標である最大45GWが実現すれば欧州、中国に次ぐ洋上風力発電の導入国になる可能性があります。

——日本の洋上風力発電は始まったばかりで発電コストなどが高くて、経済性がなかなか確保できないのではないですか。

【木南】欧州の例をみると、20年前に発電コストが40円/kwhだった着床式風力発電が今では10円/kwhを切っています。浮体式も10年前には30~40円/kwhだったのが今では20円/kwhを切りました。これは羽根の大型化や工事の習熟度が上がったおかげで、コストは急速に下がってきたのです。

洋上風力で先行した欧州に経験やノウハウをこれから洋上風力発電に本格的に取り組む日本は活用できると思います。

レノバの木南陽介社長
撮影=安井孝之
レノバの木南陽介社長

台風に耐えうる規格「クラスT」の風車も登場

——日本では台風が数多く接近するので、風力発電が損傷する恐れがあるという指摘もあるようですが、大丈夫でしょうか。

【木南】日本が台風などの日本固有の気象条件に合わせて国際電気標準会議(IEC)に提案し、2019年にIECが新設した「クラスT」と呼ばれる国際第三者認証があります。クラスTを取得した風車は台風に耐えうる規格として国際的に認められています。すでにヴェスタスの一部の風力発電がこの規格を取得し、GEの大型洋上風力発電も最近取得したようです。こうした風力発電を設置すれば台風に見舞われても壊れることはないでしょう。

——先行している欧州の経験知を日本で活用するのは難しくはないですか。

【木南】工事のインフラ整備がポイントになりますが、洋上風力発電の建設や維持管理のための拠点港湾が2020年に指定されました。秋田港、能代港、鹿島港、北九州港の4港です。洋上風力発電の建設には重厚長大な資材、機材を使いますので頑丈で広い埠頭が必要です。秋田港などの4港が洋上風力の建設に向けて整備され、そこを拠点に工事が繰り返されることになります。

洋上風力発電の建設経験は日本では少ないのですが、拠点ができたことで、そこで繰り返し経験を積むことができ、習熟度が増します。これがこうした工事には効いてきます。