米国の今は「30年前の日本と同じだ」
今、米国で今起きていることは、まさに1985年から90年までの日本のバブルの時に起きたのと全く同じ現象だ。そして、その後の「バブルの崩壊」で、多くの日本人投資家は、散々な目に遭った。
また日本経済は「失われた30年」を経験してしまった。日本がこの40年間で、世界ダントツのビリ成長国家だった一大要因でもある。その意味でも「バブルの反省/復習」は、これから起こる悲劇を回避するためにも極めて重要なのだ。
1985年から1990年までのバブル時の日本の経済は狂乱経済とまで言われたものだ。建築ラッシュで建設資材を積んだトラックが東京中を走り回る。若い社員でさえ毎晩、接待づけ。深夜の盛り場にはタクシーを拾う長蛇の列ができた。
飲んだ後にタクシーを捕まえるのは一仕事だった。お立ち台でミニスカートの女性たちが踊りまくるディスコは深夜までにぎわい、バブルの象徴といわれた。皆、浮かれていた。株の値段は5年間で3倍になり史上最高値(1989年12月に3万8915円)を記録。その時でさえ「日経平均は8万円に行くぞ」とか「10万円に行くぞ」とか景気のいい話が飛び交った。
土地は公的数字には明確に表れなかったもののちまたでは約10倍に跳ね上がったといわれた。千代田区六番町の1種住専の土地が坪6000万円で売れたとの話もあったほどだ。
日銀と同じ間違いを繰り返す米国の中央銀行
しかし、日銀はバブル時代、消費者物価指数(CPI)のみに目を向け、こうした資産価格の高騰に目を向けようとしなかった。
バブルの最後の最後に資産価格高騰の弊害に気づき、金利を急速に引きあげた。その結果、現在に至る経済の長期停滞を引き起こした。以前(「バブル崩壊に今すぐ備えよ」ワクチン接種開始で高まる日本株リスク)の記事で紹介したように、当時の澄田日銀総裁は判断の誤りを認め、著書『<真説>バブル』(日経BP社)で反省を述べている。
そして私は、今のFRBは、当時の澄田日銀総裁と同じ間違いをしていると考えている。FRBが、現在、資産高騰の意味に気づかず、引き締めが遅れているのは当時の日銀と同じである。
先の著書で澄田元総裁が「消費者物価などの指標があまり過熱していないのに、のちのバブルと呼ばれる資産価格だけが上昇する現象は、日本では初めてのことで、世界でもそれまで指摘されていなかった現象でした」と述べているように、FRBにとっても「過去に経験のない事態」なので、その重要性に気がついていないのではないかと思う。