上野千鶴子とヒロシの共通点

累計100万部を超える『おひとりさまの老後』シリーズで知られる社会学者の上野千鶴子さんは、いわば優雅なおひとりさまの代名詞になっていますが、その秘訣ひけつとして友人関係の重要性を説いています。

「老後のおひとりさまを支えてくれるのは、『このひとイノチ』という運命的な関係よりは、日々の暮らしを豊かにしてくれるゆるやかな友人のネットワーク」(『男おひとりさま道』文春文庫)というわけです。ここでも「関係の質」が必須条件になっています。これは裏を返せばコミュ力のない者は淘汰とうたされる事態を意味しています。

もう1つ例を挙げましょう。お笑いタレントでYouTuberのヒロシさんです。メディアでは彼女も友達もゼロという面ばかり強調されることが多いのですが、『ひとりで生きていく』(廣済堂出版)を読むと「僕はソロキャンプをする者同士で集う『焚火たきび会』に参加している」と言い、「共通の趣味と話題を通じたゆるい人間関係を築いていこう」と書いています。

これもその輪の中に入って馴染なじむためには基礎的なコミュ力が要求されます。また、どんなゆるい関係性もウチとソトがあり事前に選別されている場合が大半です。

「孤独格差社会」における勝ち組はコミュ力が高い

これは、ソロ・非ソロを問わず、自分にとって良好な人間関係を確保し、うまく維持していける積極的孤独(神学者のパウル・ティリッヒの言葉を借りれば、「ひとりきりでいるという恵み」)に生きる勝ち組と、良好な人間関係を築ける見込みがなく、常にあっぷあっぷしている消極的孤独(ひとりきりでいる苦痛)に生きる負け組に、いやが応でもグラデーション分けされてしまう「孤独格差社会」と呼べるものです。

なぜなら能力主義と同じく良好な人間関係は、自らの手で作り上げるしかないからです。労働市場や恋愛市場におけるすさまじい生存競争の延長線上にあり、相手につながりを持ちたいと思わせられるかという当人のコミュ力にかかっているのです。