家族がいても孤独や孤立のリスクは付きまとう
最近、コロナ禍での若者や女性の孤立が話題になることが多くなりました。日本でもイギリスに続いて「孤独・孤立対策担当大臣」が設けられ、自殺防止や高齢者の見守り、子どもの貧困といった問題に取り組むことになっています。
しかし、ここで決して見落としてはならないのは、家族やパートナーなどの有無にかかわらず、孤独や孤立のリスクは付きまとうという事実です(ざっくり説明すると、孤独は主観的な感じ方、孤立は客観的な指標として用いられる傾向があります)。
結婚していて子どもがいても友人が一人もおらず、強い孤独感を抱えている人もいれば、独身だけど多様な人間関係を持ち、独自にコミュニティーを作っている人もいるからです。また、相変わらず結婚すれば孤立せずに済むといった言説が多いですが、誰しも離死別をきっかけにシングルになる可能性は避けられません。
つまり、予防的観点から見て重要なファクターになってくるのは、「自分にとって最適な関係性を構築できる能力」だといえるのです。
友人の「数」は重要ではない
人を健康で幸福にする要因について長期間追跡した「ハーバード成人発達研究」という有名な研究があります。研究責任者で精神科医のロバート・ウォールディンガーは、「私たちを健康に幸福にするのは、良い人間関係に尽きる」と主張しました。そして「ここで重大な事は、友人の数だけがものをいうのではなく、生涯を共にする相手の有無でもない」と言い、「重要なのは身近な人達との関係の質」であると結論付けました(ロバート・ウォールディンガー『人生を幸せにするのは何? 最も長期に渡る幸福の研究から』TED)。
言い換えれば、生活を共にする家族やパートナーの存在、友人の数は畢竟、決定的な要素ではないということです。「生活の質」(quality of life)ならぬ「関係の質」(quality of relationships)だというわけです。
確かに、人によって人間関係の快不快は、相性だけでなく、多寡(会う頻度)や濃淡(浅いか深いか)にもかなり左右されます。例えば恋人と毎日一緒にいたい人もいれば、月に1回で十分、あるいは恋人という固定的な関係も不要という人もいるわけで、本人がどう感じているかに依存するからです。つまり一般化しづらいのです。