裁判も受けずに収監された
ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、国家権力を「掌握」してからまもなく3カ月が経つ。民主化を求める市民らを抑えようとする国軍の弾圧は日々エスカレートし、4月下旬には死者数は少なくとも700人超に達している。そんな中、日本人フリージャーナリストの北角裕樹氏(45)が当局により拘束。現在もなお、現地刑務所での拘留が続いており、同氏が1日も早く無事に解放されることを祈りたい。
いきなり刑務所に入れられるほどの罪を犯したのか。救出の手立てはあるのか。現地の人々の声から分析してみたい。
北角氏は4月18日夜、「うその情報を流した疑いなど」を理由に、ヤンゴン市内の自宅アパートで逮捕、連行された。「同じアパートの住人全てが当局者の聞き込みを受けた」との情報もあることから、拘束は偶発的なものではなく、当局が北角氏を狙って約50人の部隊員を動員し、身柄確保に及んだ可能性が高い。
拘束された北角氏は、裁判を受けることなく、ヤンゴン市内にあるインセイン刑務所に収監された。現地の日本大使館が当局に折衝を進め、同氏との接触を図ったところ、23日午後、電話での会話が認められた。同氏と話した丸山市郎駐ミャンマー大使によると、「健康状態に問題なく、暴力なども受けていない」ということだ。
ただ、人権を蹂躙することで悪名高い同刑務所の看守らが収容者に対し「穏当な扱い」ができるかどうか疑問に感じる。
正規の司法手続きを踏んだとは思えない蛮行
国営テレビは、同氏の罪状について改めて「うその情報を流すことなどへの罰則を規定した法律にもとづいて訴追」と報じてはいるものの、正規の司法手続きを踏んだとは思えず、恣意的な当局の対応に日本政府も抗議の構えを見せている。
北角氏は、本当に国軍に不興を買うような「偽情報」を流していたのだろうか。同氏のFacebookアカウントは閉鎖されることなく閲覧可能な状態(4月26日現在)となっている。
拘束直前に上げられた情報としては、「東京の増上寺で行われたミャンマー人の犠牲者法要」の動画へのリンク、その前は「在日ミャンマー人がミャンマーの民主派が設立した国民統一政府(NUG)への支持を表明」といったものだ。過去の書き込みを見ても「国軍の蛮行」を知る第三者が見ればさもありなんという内容で、「フェイクニュースを乱造して公開している」といった状況とは程遠い。