スマホやAIとうまく付き合うにはどうしたらいいのか。便利なはずのテクノロジーに、いつの間にか振り回されていると感じる人も少なくない。ソニーグループのエンジニア・礒津政明さんは、だからこそ「役に立たないことを愛してほしい」と語る。著書『父が娘と語り尽くす 深く、わかりやすく、とんでもなく熱い テクノロジー全史』(実務教育出版)より、女子高生の娘との対話形式でその真意を紹介する――。
スマホに操られる私たち
――うわっ、気持ち悪っ!
どうしたの? 急にスマホを投げて。
――見てよこれ。さっき友達と「ハンバーガー食べたいね」って話してただけなのに、インスタにハンバーガー屋の広告が出てきたんだよ! 私の会話、誰かに盗聴されてるのかな? まるで私の心が読まれてるみたいだし、自分が「操り人形」になった気分……。
あー……あるあるだね(笑)。でもエナ、その「操り人形」という感覚は、決して間違いじゃない。じつは人類の歴史で見てもいま、すごく異常なことが起きているんだ。
――異常なこと?
「石器時代」を想像してごらん。石斧って武器があったけど、あれは人間が「振る」ものだよね?
――当たり前じゃん。石が勝手に「殴りに行こう」とか絶対言わないし。
そう。これまでの数千年の間、常に人間が「主」で、道具(テクノロジー)は「従」だったよね。「人間が命令し、道具が動く」。この関係は絶対だった。でも、いまはどうだろう。エナのスマホ、1日に何回「通知」が来る?
――えーっと、LINEかインスタとか……数え切れない。
その通知が来るたびに、エナはハッとして画面を見る。アプリを開く。返信する。これって、「スマホが命令して、人間が動いている」状態じゃないかな?
――言われてみれば! 私、スマホの呼び出し音にめっちゃ従ってる。
そうなんだ。生成AIの登場で、それは決定的になった。AIが提案(指示)して、人間がそれを実行する。有史以来初めて、「主と従の関係」が逆転し始めているんだよ。

