「効率化」「最適化」というテクノジーの罠

――うっ……。まさにさっきの広告の話じゃん。

企業やAIにとって、エナが泣こうが笑おうが関係ない。重要なのは「クリックしてくれるか」「課金してくれるか」という効率だけなんだ。これを会社では「人的資源(ヒューマン・リソース)」なんて言うけど、言葉通り、人間が「材料」や「燃料」になっちゃってるんだよ。

――なんかムカついてきた。私は電池じゃないし!

でもね、本当に怖いのはここからだ。最近の僕たちは、AIに支配されている感じでしょ。それがもし「自分から喜んで支配されに行っている」としたら?

――えっ?

エナは「タイパ(タイムパフォーマンス)」を気にするでしょ? 映画を倍速で見たり、要約サイトで読書感想文を書いたり。

――う……それは、効率よく宿題終わらせたいし……。

そう、それこそが「ゲシュテル」のワナなんだ。「効率」や「最適化」こそが正義だと思い込まされて、ムダな時間や回り道を許せなくなっている。その結果、人間自身が「高速処理できる機械」になろうと努力し始めてるってわけさ。

恋愛や友情もデータ処理に変わる

――言われてみれば……YouTubeも最初の3秒で面白くないとすぐ飛ばしちゃうし、友達とのLINEもスタンプだけですませちゃう。ムダ話するのが面倒くさいとき、あるかも。

でしょ? 恋愛だってそうだよ。マッチングアプリを使えば、年齢や身長でフィルターをかけて、効率よく「理想の相手」を探せる。でもそこには、「偶然の出会い」とか「ダメな部分も含めて好きになる」という人間らしいドラマはない。あるのは「スペックの照合」というデータ処理だけなんだ。

スマートフォン
写真=iStock.com/RyanKing999
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――うわぁ……。なんか、すごく冷たい世界だね。

もっと極端な未来の話をしようか。もしエナが親友と大ゲンカしたとする。気まずくて謝れないとき、AIが間に入ってくれたらどうする?

――間に入るって?

「いまこのタイミングで、この文章でLINEを送れば100%仲直りできます」って、AIが代筆して送信までやってくれるとしたら。

――えー……それは、ちょっと助かるかも(笑)。面倒なケンカがすぐ終わるなら。

だよね。でもそれだと「親友との関係」を築いているのはエナじゃなくて、AIのアルゴリズムってことにならない?