新興国でこそ進む「デジタル決済」
――パパ、今度のインド出張、現地のお金はいくらくらい両替していくの? 気になってるお土産があるから買ってきてほしいんだけど。
ん? 現金はほとんど持っていかないよ。
――そうなの? じゃあ、小さいお土産屋さんじゃ買えないか。
いやいや、逆だよエナ。インドの路地裏の屋台には、「しゃべるスピーカー」が置いてあるんだ。
――え? スピーカー?
そう。お客がスマホで二次元コードを読み込んで支払うと、その箱が「○○ルピー、受け取りました」って大音量でしゃべるんだよ。「Paytm(ペイティーエム)サウンドボックス(注1)」って言うんだ。これなら、忙しい店主がスマホを確認しなくてすむし、文字が読めない人でも耳で確認できるから、安心して買い物できる。
――文字が読めなくても使えるデジタル決済?
そうなんだ。日本人が「現金が一番信用できる」と思っている間に、新興国では「デジタルこそが信用の証」になっている。これが前に話した「リープフロッグ現象」(編集部注:インフラが整っていない新興国が、先進国よりも早く最新テクロノジーを導入すること。カエルがジャンプする様子になぞらえた)の面白いところさ。そして、決済はあくまで「入り口」にすぎない。その先にあるのが、世界中の企業が血眼になって作りたがっている「スーパーアプリ」(注2)っていう巨大な経済圏なんだ。
注1 サウンドボックス
インドの決済大手Paytmなどが普及させた、決済完了を音声で知らせる小型スピーカー。二次元コード決済とセットで置かれている。文字の識字率に課題がある地域でも、「音」で着金を確認できるため、爆発的に普及した。テクノロジーが社会課題を解決した好例。
注2 スーパーアプリ(Super App)
メッセージ、SNS、キャッシュレス決済、ネット通販、配車、ホテル予約など、日常生活に必要なあらゆるサービスを一つのアプリ内に統合したプラットフォームのこと。ユーザーは個別にアプリをダウンロードする必要がなく、一つのIDと決済手段ですべての機能を利用できる。中国の「WeChat(微信)」や東南アジアの「Grab」、イーロン・マスク氏がX(旧Twitter)で目指す「Everything App(万能アプリ)」などが代表例。

