どう裁かれるのか?

ミャンマー当局が北角氏を拘束するに当たり、日本人を標的にしたのか、ジャーナリストが標的だったのか、その意図はいまひとつはっきりしない。ただ、北角氏は2月26日にもデモ取材中に拘束され、その時は数時間後に解放されている。

2度目の拘束となったことで、「当局は前回と同じように簡単に解放しないだろう」と悲観的な予測も聞こえてくる。

一方で同氏の自宅は、国軍が敷いた戒厳令の適応区域の外にあるため、一応はミャンマーの法律で裁かれる期待もある。もし戒厳令が発効した地域で逮捕された場合、軍法裁判にかけられ、弁護人なしの恣意的な判決を受ける可能性が高いが、同氏のケースは戒厳令の対象になっていない分、いくらか望みが高そうだ。

ただ残念なことに、国軍に対抗する連邦議会代表委員会(CRPH)からは、北角氏の解放を呼びかける声は聞こえてこない。CRPHは国民民主連盟(NLD)を軸とする2020年11月の総選挙で選出された議員らで構成される民主派組織だが、目下、出口のない国軍による暴力行為の阻止や、政権の不当性を訴えるのを主眼としているからなのだろうか。

「国軍政権」が崩壊すれば、日系企業に大きなダメージか

北角氏は「偽情報を流したジャーナリスト」として拘束されているが、国軍が訴えようとしているメッセージはそんなに単純なものではないと考えるべきだ。

4月16日、アジアの時間帯では17日早朝にかけて日米首脳会談がワシントンで行われた。菅義偉首相がバイデン大統領にとって「顔を合わせての初の会談相手」となったわけだが、日米両国だけでなく各国メディアが注目する中、「中国からの挑戦に対する連携」そして「台湾海峡における和平と安定」について言及し、今までにない外交姿勢が示された。

中国を取り巻く人権問題については「深刻な懸念を共有」という形に収まったものの、中国への一定した圧力にはなっているだろう。

2019年11月26日、ミャンマー第二の都市、マンダレー
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会談結果を見る限り、ミャンマー問題については表向きな言及はなかった。とはいえ、具体的な経済制裁に踏み切っている米国としては、日本に対し何らかの「意思確認」を迫ったかもしれない。米英そして欧州連合(EU)はすでに国軍のフロント企業2社などに対し、取引停止という明確な制裁を加えている。

一方、日本は長年にわたって途上国開発援助(ODA)の形で、国防省や国軍のフロント企業に莫大な利権をもたらしている。もしも「国軍政権」が崩壊したら、これまでの日系企業による大型案件の多くが泡と消えるリスクがある。