「殺虫剤をまいてでも雑草を根絶やしに」
こうした背景を考えると、国軍は、日本人として積極的にミャンマー事情を伝えていた「目立つ人物」を拘束することで、日本の対緬関係の出方を見極めようとしている可能性がある。
もしも、国軍が今後も日本関連の利権を維持できるよう、北角氏を文字通り「人質」にとって日本政府に決断を迫ってきたらどう対処するつもりなのだろう。日本が「対緬制裁で英米欧に追随する」とでも言った途端、北角氏の状況はより厳しいものになる懸念がある。
国軍にとって、外国人を人質にとって自分たちの立場を有利にするシナリオを作るのは簡単なことだ。国軍による人権無視の言動としては、軍の最高意思決定機関「国家統治評議会」のゾー・ミン・トゥン報道官のこんなコメントがある。
同氏は9日、抗議活動を行う市民らを念頭に「木を育てるためには、殺虫剤をまいてでも雑草を根絶やしにしなければならない」と述べた。これは明らかに武力による弾圧を容認するもので、異常という以外に適当な言葉が見つからない。
50年近くにわたって軍事政権が続いていたミャンマーは、2011年に民政移管され、市民らはそれ以来、自由な暮らしを謳歌してきた。「あの暗黒時代に戻すわけにはいかない」と、デモ活動は軍による弾圧に耐えながらこの先も続くことだろう。
こうしたミャンマーの人々の願いを後押しする意味でも、北角氏の解放に向けた日本政府の舵取りはより正確なものでなくてはならない。「開かれたアジア太平洋」を標榜する菅政権はこの難問にどんな回答を導き出すのだろうか。