カリスマ書店員・エッセイストとして活躍しながら、39歳でストリッパーとしてデビューした女性がいる。新井見枝香さん(40歳)だ。彼女はなぜストリッパーになったのか。ノンフィクション作家の菅野久美子氏が聞いた――。

きっかけは小説家に誘われて…

ストリップ劇場が好きだ。

艶やかな色彩を放つミラーボールの下、眩いばかりのスポットライト。その中心で、あらわになる一糸まとわぬ肢体――。ステージの上には、汗をキラキラと輝かせながら舞う、神々しいとさえ思える女性たちの姿がある。私は、ストリップ劇場に足しげく通っては、数え切れないほどの女神たちを間近に見る。

そんな夢のような舞台に思いがけず立つことになった女性がいる。

カリスマ書店員で、そして人気エッセイストとしても活躍する新井見枝香さん(40歳)だ。新井さんは昨年の2月、39歳の時に新人踊り子としてデビューした。なぜ、カリスマ書店員として活躍していた新井さんが、ストリッパーをやろうと決めたのか。それは小説家の桜木紫乃さんに誘われて、上野のストリップ劇場を訪れたのがきっかけだった。

新井見枝香さん/1980年、東京都生まれ。アルバイト時代を経て書店員となり、現在は東京・日比谷の「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で本を売る。独自に設立した文学賞「新井賞」も13回目を発表した。著書に『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』(秀和システム)、『本屋の新井』(講談社)など。
撮影=高鍬真之
新井見枝香さん/1980年、東京都生まれ。アルバイト時代を経て書店員となり、現在は東京・日比谷の「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で本を売る。独自に設立した文学賞「新井賞」も13回目を発表した。著書に『本屋の新井』(講談社)など。

「桜木さんに連れられて初めてストリップを見て、ここは桃源郷だな、と思ったんです。次から次に、きれいなお姐さんたちが出てきて、夢みたいだなぁとすぐにこの世界に引き込まれました」

中でも最も心を打たれたのは、ベテラン踊り子の相田樹音さんだった。ダンスの技術はもちろんのこと、ショーとしての魅せ方や観客を巻き込む力に圧倒されたという。

1回目のステージが終わると樹音さんは表までサンダルのまま出てきて、親しげに話しかけてくれた。さっきまでステージで踊っていたのに、全く飾らないのだ。