コロナを乗り越えることで、新たな絆ができそうな気もする
こうした体験ができるストリップ劇場は、残念ながら減少の一途をたどっている。2017年にはTSミュージック、そして2019年には、DX歌舞伎町が相次いで閉館。しかし、新たな潮流も生まれつつある。
近年では、かつての新井さんや私のように、ストリップの魅力に目覚める女性客の数も増えているのだ。女性客を呼び込もうと女性価格を設けるなどして、門戸を広げている劇場もある。
新型コロナの影響はストリップも直撃した。一時期は客足が落ち込んだり、劇場も閉めることを余儀なくされたが、今は徐々にではあるが、客足は回復しつつあるという。一部の劇場では「かぶり」と呼ばれる最前列の観客には、フェイスシールドを貸し出した時期もあった。また、現在でも公演のたびに換気したり、公演回数を減らすなどして、劇場側も感染症対策を行っている。
「フェイスシールドをつけると曇ってステージがなかなか見えなくて大変なのに、そこまでして観てくださる方もいた。それは本当にありがたいことだけど、心苦しくもあって。でも、コロナを乗り越えることで、新たな絆が踊り子とお客さんと劇場でできそうな気もするんです」
新井さんはそう言って私の目をしっかりと見つめた。
新井さんが、言葉ではなく身をもって教えてくれたこと
平日昼間のストリップ劇場、シアター上野。ほぼ満席に客席が埋まる中、新井さんのステージの時間がやってきた。新井さんが披露したのは、一周年を記念して制作した作品だ。固唾をのんで見守る男性客に囲まれて、新井さんは大音響の中、目も眩むような光を全身に浴びている。そして肉体のすべてを余すところなくさらけ出して、悠々とステージを横断してゆく。その距離はあまりに近く、私の目と鼻の先だ。まるで手が届きそうな距離に新井さんの体があって、とてつもなく心地よく幸せそうに舞っている。
――いつかを待つことはなく、なりたいと思える人間には今すぐなるということ――。
それは、私に新井さんが、言葉ではなく今目の前にあるその体で身をもって教えてくれたことだ。ステージ上の新井さんと目が合って、一瞬私に笑いかけた気がしてドキッとする。これもストリップの醍醐味の一つだ。
新井さんは小さなステージを変幻自在に飛び回り、観客の視線を浴びて、どこまでも自由に飛躍している。
そんな力強い姿を目に焼き付けながら、思わずこう問いかけている自分がいた。新井さんのように気持ちにまっすぐな生き方ができているだろうかと。いや、きっと、ストリップの魅力に圧倒され、そのパワーに直接触れること自体にすでに変化の兆しがあるのだ。それによって何かが解放されることで、自分自身に正直になれる。新井さんのほほ笑みがそう語りかけているような気がした。
※新井さんの直近の出演予定:3/21〜3/31大和ミュージック、4/1〜4/10シアター上野