広告業界最大手・電通が過去最大の赤字を記録した。最終損益の赤字は2期連続だ。なぜ業績が悪化しているのか。経済評論家の加谷珪一氏は「赤字額は過去最大だが、見かけほど業績は悪くない。むしろ問題なのは、デジタル化の流れに取り残されつつあることだ」という――。
コロナ危機で「広告出稿」が大幅に減っている
新型コロナウイルスの感染拡大に、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言が重なり、オリンピック開催がますます危うくなっている。そのような中、オリンピックと一心同体の関係にあるとされる電通グループの業績が急激に悪化している。
万が一、オリンピックが中止となった場合、さらに大きな打撃を受けることが懸念される。広告業界のガリバーと呼ばれ、日本社会に絶大な影響力を及ぼしてきた同社に一体何が起こっているのだろうか。
電通グループは2021年2月15日、2020年12月期決算を発表した。収益は前年比10.4%減の9392億円、営業損益は1406億円の赤字、最終損益も1595億円の赤字だった。最終損益の赤字は2期連続(前期は808億円の赤字)で、今回の赤字額は過去最大である。
同社はエージェンシーとメディアレップを組み合わせた業態であり、顧客企業から広告料金を受け取り、一定のマージンを差し引いた金額をメディアに支払っている。決算短信ではメディアへの支払い控除後の実質的な売上高である「収益」が計上されているが、グロスでの売上高は約4.5兆円で、前年比マイナス12.6%だった。
2020年以降、コロナ危機によって多くの企業が業績を悪化させており広告出稿が大幅に減っている。電通もそのあおりを受けていることに加え、テレビや新聞など従来メディアの視聴者や読者が減っていることから、オールドメディアに強い電通には大きな逆風が吹いている。
こうした中、期待を集めていたオリンピック開催が危ぶまれていることから、電通の今後について悲観視する声も聞かれる状況だ。