持つ者、持たざる者の“二極分化”が鮮明に
2021年に入り、韓国の雇用・所得環境が厳しさを増している。その一因として、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策が期待された効果を表していないことがある。
左派系といわれる文氏の政策は、これまでも経済専門家から「自身の支持母体である労働組合などへの配慮が強い傾向がある」と指摘されることが多かった。そうした政策は、すでに労働組合に加入している労働者には福音になるものの、企業のコスト高や若年層の就職率などにマイナスの影響をもたらすことが想定される。そうした弊害が顕在化すると、韓国経済の成長のエネルギーを低下させることも懸念される。
2020年春先にはコロナショックが発生し、韓国では若年層を中心に失業率が上昇している。文政権下、資産や安定した職を持つ者と、持たざる者の経済格差の拡大をはじめとする韓国経済の“二極分化”は、一段と鮮明になる可能性がある。サムスン電子などが中国企業の追い上げや激化する国際競争に直面していることの影響も軽視できない。雇用面を中心に文大統領が経済格差を是正することは容易ではないだろう。
失敗だった最低賃金の大幅引き上げ
文政権の経済政策の特徴は、企業経営者に対して厳しい姿勢をとってきたことにある。文氏は、重要な支持基盤の一つである労働組合などを重視してきた。最低賃金の引き上げや、労働時間の短縮などはその代表的な施策といえる。
2018年に16.4%、2019年に10.9%と大幅に最低賃金は引き上げられ、GDP(国内総生産)がマイナス成長だった2020年の引き上げ率は2.87%だった。文政権は経済運営の効率性を高めることよりも、労働者の取り分を増やすことを重視している。
その結果、韓国では中小企業を中心に企業の経営体力が低下し、雇用が減少した。企業が労働コストの上昇に対応するためには、どうしても新規の採用を抑えなければならない。それに加えて、企業経営者は労働組合からの賃上げなどの要請にも対応する必要がある。そのしわ寄せとして、韓国では15~29歳の若年層の失業率が高止まりしている。