大人と子どもの違いは「匿名性」の有無

結局は、いじめている側への対策が必要です。いじめの通報に関しては、学校に直接する、あるいは教育委員会にするというパターンがありますが、自治体により分かれています。私たちは、いじめ防止プラットフォーム・マモレポを運営しているのですが、こうしたいじめ相談サービスを子どもたちが使うことで、「たくさん通報が来て忙しくなる」と思っている先生もいるかもしれません。しかし、見逃して大きな事件が起こるほうが大変です。気軽に通報できるようになることは、いじめの抑止力にもつながります。

大人のいじめと子どものいじめで大きく違うことは「匿名性」。大人のネットいじめは匿名で、全然知らない人をいじめるというケースが多いでしょう。一方で、子どものネットいじめは、誰が書いているかわかる、あるいは知っている人がやっているというように、匿名で書かれていても身近にいる人が行う場合が多いでしょう。「ネットいじめはリアルのいじめよりも対策が難しい」と言う人もいますが、ネットいじめはリアルと地続き。ネットだと「集団戦」になりやすいので、いじめが増幅しやすい傾向がります。

いじめているLINEグループが活発でなければいじめは立ち消えることが多く、ここから、ネットいじめはリアルとつながっているということが推察されます。誰かがグループを抜けたり、ブロックしたりすればいじめが終わることも。クラス替えや力関係のちょっとした環境の変化で子どものいじめには終わりがあります。

しかしながら、いじめられた子どもたちは、不登校や自殺といった行動につながるだけでなく、成長した後もいじめの経験がトラウマとして残り、人間関係に影響を与えてしまうことも多い。

娘と真剣に話をしている母親
写真=iStock.com/Peter Berglund
※写真はイメージです

もし自分の子どもがネットいじめに遭っていると気づいたら、まず「あなたが悪いんでしょ」という言葉は封印してほしいものです。親に相談すること自体も勇気のいることなのだと肝に銘じましょう。

もう一つは、「相手にするな」「気にするな」という言葉もかけがちなのですが、これはもう一歩踏み込んだ一言をかけてあげてほしい。つまり、「『死ね』と書かれたら警察に言えるから、その時は言ってね」といった具体的な対応策とともに、なぜ気にしないほうがいいのかということまで伝えることです。こうして寄り添うことが、子どもを救うことになるのですから。

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