「目に見えないウイルスより人の目のほうが怖い」

新型コロナウイルス感染症によるコロナ禍とともにネットで飛び交う心ない誹謗中傷や根も葉もないデマは、2度目の非常事態宣言の発出とともに深刻化している。

赤像から円を描くように距離をとる木像
写真=iStock.com/designer491
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中でも、公職にある人への攻撃は半端ではない。2020年11月末に新型コロナウイルスに感染した宮城県白石市の山田裕一市長のツイッターには、「死ね」「白石市の恥さらし」などと中傷する投稿が相次いだ。12月中旬に公務に復帰した山田市長は、自身が「ネット中傷」の標的になったことに「大きなショックを受けた」という。

「感染者狩り」と呼ばれる行為も横行している。東海地方に住む10代の男性は実名を伏せて感染を発表されたにもかかわらず、ネット上でたちまち特定され、「バイオテロリスト」「世の中から消えてほしい」とバッシングを受けた。被害男性や家族は「目に見えないウイルスより人の目のほうが怖い」とおびえる日々が続く。

従業員に感染者が出た飲食店には「感染源の店を閉めろ」と脅迫する投稿が舞い込んだ。店長は「中傷のレベルは想像を超えていた」と絶句。客足はいまだに戻らないという。

「ネット中傷」の被害者は泣き寝入りするしかなかった

コロナウイルスに感染していないにもかかわらず、標的にされるケースも少なくない。関西地方のコンビニ店長は、感染を疑われ、マスク姿の写真とともに「感染者の店には絶対に行かないように」「咳をしていて、態度が悪い」などと、あることないことが書き込まれた。店長は、不安神経症と診断されて2週間休職、さらに2週間の時短勤務を余儀なくされたという。

日夜激務に耐える医療従事者にも「コロナがうつるから近寄るな」という心ない書き込みが続く。

「ネット中傷」の被害に遭った人たちは、有効な対抗手段を持たないため、名誉の回復が難しく、多くは泣き寝入りせざるを得ないのが実情だ。

「ネット中傷」は、ネット社会の闇の部分とされるが、これまで表現の自由を重視するネット文化との絡みなどから、なかなかメスを入れられずにきた。

だが、ここにきて、明らかに風向きが変わりつつある。