事業再開が遅れれば景気回復の足枷になる

Go Toトラベルの一時停止という政策決定が遅れ、菅政権の支持率は低下している。その影響は軽視できない。

京都
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内閣支持率の低下は、政府に対する人々の信頼感の低下そのものだ。政府への不信感が増せば、政策の効果は発現しづらくなる。それは、社会と経済の安定にマイナスだ。感染第3波によって経済の下押し圧力が高まる状況下、政策への信任低下は避けなければならない。

冷静に考えると、Go Toトラベル政策は、わが国経済の持ち直しに相応の効果を発揮した。感染が落ち着いた上で各種Go To事業を推進することは、経済の下支えに重要な役割を発揮する可能性がある。しかし、今回の対応が後手に回ったため、政策に対する世論の反感が高止まりし、事業再開がスムーズに進まない恐れがある。それが現実のものとなれば、わが国の景気回復にとっては大きな足枷あしかせだ。政府は、今回の対応の遅れによってGo To政策が悪者扱いされてしまうことは避けなければならない。

必要な支援や補償は惜しんではならない

問題は、政権発足から日が浅いこともあってか、菅政権のコロナ対策が鈍いことだ。その上、菅氏が8人ほどで会食していたことが明らかになり、支持率への影響は免れないだろう。

逆に言えば、菅政権は、これ以上、社会の不安を高めないために今回の教訓を生かさなければならない。そのためには、言動の一致はもちろんのこと、専門家のアドバイスなどをもとにして政権全体が客観的かつ明確に政策の優先順位を認識しなければならない。その上で、菅首相が中心となって社会の多様な利害を調整してリーダーシップを発揮し、時機を逃さずに必要な政策を実施しなければならない。

今、政府は何よりも人々の健康と生命を最優先しなければならない。そのためにソーシャルディスタンスの強化は重要だ。その経済的な打撃を緩和するために、必要な支援や補償は惜しんではならない。それがコロナ禍における経済運営の基本的な考え方だろう。反対にそうした取り組みを進めることが難しいようだと、世論の内閣支持率は低迷し、社会全体での利害調整は難しくなるかもしれない。菅政権は正念場を迎えている。

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