「ピック・アップ・トラックの人たち」にウケる言葉

もちろん、それでも良識ある大人として公の場での使用は避けるべき用語である。ところがトランプ大統領は、公的な場であろうとおかまいなし、しかも合衆国大統領としての演説でも平気で使うからたちが悪い。

彼の演説は口語調で、相手への批判はとどまるところを知らない。まじめなのか冗談なのかわからないことが頻繁にある。良識ある一般的なアメリカ人の感覚では、聞いているほうが恥ずかしくなることもある。とくに女性に関する話題が出るとそう感じる。

もともと不動産業や建築業を営んできたことから、社会の底辺の人々の言葉を知っているし、彼らが好む言葉、内容で、いくらでも話ができるのである。ダーティジョークも含め、ジョークはお手のもの。白人労働者の前に行けば同類のにおいが漂い、南部に行けば、ジーンズを着て、トラックを運転し、農業で生活している「土のにおいのする人々」にも通じた。

ちなみに、このような農業の人々を称して、「ピック・アップ・トラックの人たち」という。彼らの楽しみは、南部の自動車レース「NASCARナスカー」である。

トランプ氏がこうしたブルーカラー層を集めて集会を開くと、多くのファンが押し寄せる。集会は、熱狂を超えてまるで暴動のような騒ぎになる。男性ばかりではない、主婦をはじめとする女性たちの心も捉えてしまうのである。

その勢いで、前回の大統領選挙は勝てた。しかし今回は、この層の支持を失った。理由は、公約を実施しなかったからだ。確かに今回の選挙では、約7400万の獲得票数を得た。その数は大きい。だが、熱烈に支持したブルーカラー層は後退した。“Fakeの神通力”は消えたのである。

夕日にはためくトランプの旗
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待ち受けるジョージア州の決戦

大統領選挙をめぐる軋轢はまだしばらく続くだろうが、1つ重要なポイントがある。上院の多数派を共和党が維持できるかどうかだ。これは、ジョージア州で2021年1月5日に開かれる特別選挙にかかっている。ちなみにジョージア州アトランタは、あの名作『風と共に去りぬ』の舞台となった土地である。

12月第1週、共和党候補の2人を応援するため、トランプ大統領がジョージア州にやってきた。多数の観衆を集め、得意の大集会を開くと、トランパーズ(熱狂的なトランプ支持者)たちが大歓迎でこれを迎えた。

トランプ大統領は、大統領選挙が終わってから2億ドル以上の資金を集め、意気揚々であった。この資金をどう使うのか。反バイデン、反民主党に使われることはわかるが、具体的にそれが何かわからないところが不気味である。

トランプ大統領は、今回の大統領選挙は八百長だと決めつけ、無効を唱え続けている。自分が勝利したことを訴え、バイデン氏が次の大統領職に就くことをいまだ認めていない。この事実が、ジョージア州の上院議員特別選挙に大きな影響を及ぼしている。共和党候補の2人は板挟みになって苦悩している。