トランプ大統領の大恩赦

アメリカでは今、トランプ大統領が自分自身に恩赦を与えるということがまことしやかに噂されている。筆者としても、このあり得ない状況におおいに関心を抱いている。

とっさに出てくるトランプ氏の戦略(というか奇策)を、筆者は「カオス戦略」と呼んでいるのだが、自分が不利になると、カオスをもたらす戦略を採用し、自分のペースをつかみ独断的に事を運ぶのである。

アメリカのメディアは、トランプ大統領の恩赦をめぐり、「贈賄工作があった疑いがあるとして司法省が捜査を行っている」ことが12月1日に開示された裁判所の文書から明らかになった、と報道している。

ハーバード・ロースクールを優秀な成績で卒業した旧知の弁護士に、この報道をどう思うか尋ねた。答えは、大統領の犯罪を追及するという意味では、トランプ氏を揺さぶる作戦であり、大統領職の引き継ぎを拒む氏に対する効果的な攻撃ではないか、というものだった。

フェンスにしがみつく手とその向こうのアメリカ国旗
写真=iStock.com/Brad Greeff
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報道によれば、ワシントンの連邦裁判所が明らかにした文書で、ホワイトハウス高官との接触を試みるなどの「秘密のロビー活動計画」に関する捜査を当局が8月に開始し、司法省は「犯罪行為があった可能性を示す内容が含まれている」として、通信記録や電子メールの閲覧を裁判所に求めたという。

「この事実が証明されれば、トランプは万事休す、なのではないのか」と筆者が問うと、「いや、そうとも限らない。それらの証拠を実際に閲覧し、十分その証拠固めをするのは容易ではない」とその弁護士は指摘する。

ワシントンのニュースレター「The Hill」は、今後政権が交代した場合、バイデン政権下で、ロバート・モラー特別検察官がロシア捜査で報告した司法妨害のケースや、トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン氏を有罪へと導いた選挙資金法に関する疑惑、ニューヨークタイムズが9月に報じた税金詐欺、大幅な脱税の可能性について追求される可能性を指摘する。

これらの不法行為が裁判所で争われた際は、多くが証拠不足で追及は難しいのではないかと思われる。だが、トランプ大統領の脱税問題については、大きな不正行為が浮き彫りになっている。巨額の脱税が行われなかったならば、「税金ゼロ」は成立するはずがない。トランプ大統領は違法すれすれで勝負し、有罪、無罪どちらでも取れるところで戦っているとしか思えない。

くだんの弁護士も、「その方法は、負債と減価償却をうまく使うやり方で、論議を呼ぶだろう」と指摘する。筆者の知人にも、この手法でぜいたくな生活をしている人物がいる。この人も最高学府で法律を学び、成績はトップであった。