共和党vs民主党の行方

トランプ大統領が「自分が勝った」と主張したところで、実際の選挙ではそのような結果は出ていないのである。だが、共和党の候補者は、トランプ大統領を支持するトランパーズの票と、彼らに反対する共和党支持者の両方の票を取らなければ、上院の特別選挙で民主党の候補には勝てない。

特別選挙で争われているのは2議席。いずれも現職は共和党だ。

1議席は、現職の共和党デービッド・パーデュー氏と民主党ジョン・オソフ候補が争う。大統領選挙と同時に行われた上院議員選挙でも大接戦が繰り広げられた。この時は1.7ポイントと僅差ながら、得票率49.7%のパーデュー氏がオソフ氏を上回ったものの、得票率が過半数に達しなかったため、勝敗が来年1月5日の決選投票に持ち越されることになった。

特別選挙のもう1つの議席は、得票率で上位2人となった民主党のラファエル・ウォーノック候補と共和党現職のケリー・ロフラー氏が、こちらも決選投票で争うことになる。

筆者は、黒人牧師であるウォーノック氏と、ブロンドの美しい女性であるロフラー氏のテレビ討論会のテレビ中継を見た。2人はバックグラウンドからキャラクターまで、あまりに対照的である。ロフラー氏は、ビジネスで大成功した大金持ちでもあり、ジョージア州の特徴である「お金持ち」と「庶民」の対象社会をよく表す組み合わせである。

討論会を見た限り、ロフラー氏はアメリカ国内外の知識があり、世界情勢についても十分討論ができる。その一方で討論できる話題の幅は限られており、正直なところ力量は劣るように見えた。だが、2人の候補の争いは、「ネック・アンド・ネック(接戦)」で最後までわからない。

「ねじれ」は善いこと

日本でも「ねじれ国会」という言葉があるが、アメリカとは少々ニュアンスが異なるようだ。アメリカの政治では、「ねじれ」は不都合なものでなく、むしろ歓迎する傾向が強い。「今回の選挙では、ホワイトハウスを民主党が取ったのだから、上院は共和党が取るほうがよい」という認識がある。良識ある選挙民ほど、そういう見方をしがちである。

さもないと一党独裁政治が行われやすく、アメリカにとってそのような状態は防いだほうがよい、とするのが一般的なアメリカ人の考え方だ。

トランプ氏が大統領に就任し、共和党がホワイトハウスだけでなく上院までも牛耳った4年間で何が起こったか。たとえば、不正ではないが、前任者の死去で空席の出た連邦最高裁判事の決定で共和党は強引なことをした。通常、大統領選挙が行われる年は、選挙が終わるまで新しい最高裁判事は選定、任命しない伝統だが、共和党とトランプ大統領は、ホワイトハウスと上院をコントロールしているため強引に任命。これを承認してしまった。

共和党は、トランプ大統領が退任後、裁判にかけられ、最終決定が最高裁で行われる場合を想定したのだと思う。9人の判事のうち保守派6人、リベラル派3人と、まったくバランスを欠く構成になった。なんと姑息なことであろうか。4年間はほとんど「こういうこと」ばかりである。

だからこそ、緊張を持たせるために「ねじれ」が必要なのだ。大統領選挙の決着とともに、上院議員特別選挙が重要なのはそのためだ。