「プロパガンダ」に惑わされないことが重要
このように、考えれば考えるほど、EV化の促進に対して疑問ばかりわいてしまう。
CO2削減という主目的にさえ疑問符が付くのに加え、急速なEVシフトは産業構造も大きく変化させることになり、自動車産業が中核をなす日本やドイツなどでは雇用問題にも大きな影響を与えるだろう。
価格も安く、容量も大きく、充電に時間もかからずリサイクルも容易なバッテリーが開発されれば話はまったく変わってくるが、現在のリチウムイオンバッテリーを前提に考えるとEVの普及は限定的にならざるを得ないというのが自然な考え方ではないだろうか。
都市内のコミューター的な用途、地方の高齢者の限られた範囲の足としては向いているが、一般的な自動車の使い方と社会全体のエネルギー構成を考えた時、現状のCO2対策の最適解はHVの普及と性能進化なのではないだろうか。
プラグインハイブリッド(PHEV)という選択肢もあるが、中途半端に重く高価なバッテリーを積むので価格が高くなるうえに、ユーザーが頻繁に充電しないとガソリン主体の運用となり、通常のHVより燃費が悪くなるという欠点がある。
■中国もEV集中戦略を転換
それに気がついたか、中国は今までのEV集中戦略からHVも重視する方向に転換した。これにはトヨタがハイブリッド関連特許を無償で提供することを決めたことが大きい。
そもそも、日本以外の国がHVに冷淡なのはトヨタの技術にまったく追いつけないからだ。おそらく欧米も結局はHVを重視せざるを得なくなるだろう。
日本メーカーは冷静かつ客観的に判断していると思う。ユーザーとしても海外のプロパガンダに左右されずに、冷静に何が正しいのかを見極める必要があるだろう。