第2の疑問:電力を賄えるのか

一般家庭の電気消費量は、夏場でも1日15kWh程度。EVの電費を6.5km/kWhと仮定し、月1000km走るとして、1日あたりの電気消費量は約5kWh。EVが3台増えると1世帯分の消費電力が増える計算になる。EV化が一気に進むとすれば電力供給は逼迫ひっぱくするだろう。

原子力発電所の増設は見込めず、グリーン発電も設置場所が限定され簡単には増やせないうえに、発電量は天候に左右されるため安定供給は望めない。だとすると、EVが急速に増えてしまうと結局、火力発電を増やさざるを得なくなるだろう。

これではなんのためにEVを普及させるのかわからなくなってしまう。

第3の疑問:EVは安くなるのか

EVは、普及期に入ればコストダウンしてガソリン車と変わらない価格になるだろうと一般的にはいわれている。EVはパソコンやスマホとイメージが重なるので、なんとなくそうだろうと信じたくなるが、はたして本当にそうだろうか。

自動車の給油用ポンプと充電用コネクタを持つ手
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EVの価格が高いのは、ひとえにリチウムイオンバッテリーが高いからである。パソコンやスマホと比べてEVが必要とするバッテリーの量は圧倒的に多い。

パソコンのバッテリーは40Whくらい、EVは大型バッテリーだと100kWh、少ないものでも40kWhくらいなので、パソコンの1000~2500倍くらいのリチウムイオンバッテリーが必要だ。もしEVが本格的に普及すると、必要となるリチウムイオンバッテリーは膨大な量となる。

リチウムイオンバッテリーの生産にはリチウムのほか、さまざまな希少資源が必要だ。その需要が一気に高まった場合、原材料価格は下がるのではなく上がると考えるのが自然だろう。大量生産で生産コストは下がるかもしれないが、原材料価格が上がるならばバッテリー価格の大幅低下は期待できないと考えるべきではないか。

容量や充電時間の問題だけでなく、ローコストの資源で生産できるバッテリーの開発がEV普及のためには必要不可欠のように思われる。