香港のすぐそばに待機していた軍隊が出動しなかったワケ

国際社会の存在が、中国政府の香港弾圧にブレーキをかけている。中国は昨年、大規模な抗議デモや集会に対して軍隊の出動を検討し、実際に香港に隣接する中国本土の深圳に軍隊を配備していた。しかし、結果として実質的な軍隊の出動はなかった。

もし軍隊が出動していれば、天安門事件(1989年6月)の悲劇の再来となった恐れがある。アメリカやイギリスなど欧米各国が中国・香港政府を批判したことが、軍隊の出動へのブレーキとなったと考えられる。

中国の兵士から紫禁城
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11月25日の産経新聞の社説(主張)はこう訴える。

「香港をめぐる中国の独善的な行動はとどまるところを知らない。11日には全国人民代表大会(全人代)常務委員会の決定に基づいて香港立法会(議会)の民主派議員4人の資格が剥奪された。18日には、3人の民主派前議員が議事進行妨害容疑で逮捕された」
「機密情報を共有する『ファイブアイズ』(5つの目)と呼ばれる米、英、オーストラリア、ニュージーランド、カナダの5カ国の外相は民主派議員の資格剥奪に対する抗議声明を発した」

「すると、中国外務省の趙立堅報道官は『中国の主権と安全、発展の利益を損なうなら、目を突かれて失明しないように気を付けよ』と言い放った」

菅首相は会談で香港情勢について触れ、懸念を表明

何と低劣な脅し文句だろう。これに対し産経社説はこう指摘する。

「まるで無頼漢のような発言である。『責任ある大国』から発せられる言葉ではない。中国政府は国際社会から厳しい反発を受けていることが分からないのか」
「米国は大統領選後の政権移行期で香港問題に積極的に関与しにくい。日本はなおさら、人権問題をめぐって、中国に厳然とした態度を示すべきだ。菅義偉首相は25日の中国の王毅国務委員兼外相との会談で、香港をはじめとする中国政府の人権弾圧を取り上げ、明確に抗議すべきである」

見出しも「香港活動家の収監 首相は王毅氏に抗議せよ」だ。

菅首相は会談で香港情勢について触れ、懸念を表明した。この産経社説を読んだのかもしれない。ただ、会談は事務的な内容が大半で、香港の人権問題への懸念表明は簡単なものだった。残念である。

11月13日付の朝日新聞の社説は「中国と香港『一国二制度』を壊すな」との見出しを掲げ、香港議員の資格剥奪問題を取り上げている。書き出しはこうだ。

「香港の自治と民主主義が窒息させられようとしている。自由を誇った都市社会を中国流に塗り替える暴挙が、またも重ねられてしまった」

「窒息」「塗り替える暴挙」と朝日社説らしい皮肉が込められている。